新型ウイルスで見送られたオートショーでの新車発表。「何としても事業を継続する」―米国における「ステイホーム」下の新しい新車発表とは。
5月18日、トヨタの米国事業を担うToyota Motor North America(TMNA)は今年投入する新型モデルの「シエナ」(日本未発売車)と「ヴェンザ」(日本名「ハリアー」)を披露した。新型コロナウイルス感染拡大により、当初披露予定だったニューヨークオートショーが延期されたため、今回は動画配信による新車発表を実施した。撮影されたのはテキサス州にあるTMNAの本社屋と、登壇役員の「自宅」だ。トヨタイムズでは、舞台裏の映像とともに「ステイホーム」発表会に至った経緯をご紹介したい。
4月に実施した自動車4団体の記者会見で、トヨタ自動車社長の豊田はこう話した。
今、私たちがやらなければいけないことは3つある。
1つが、最前線で戦っておられる医療従事者の方々に感謝し、少しでもサポートさせていただくこと。
2つめに、何としても事業を継続し続けていくこと。
3つめが、この危機を乗り越えた時に経済復興のけん引役になること。
このメッセージを受け取ったのは日本のメンバーだけではない。「外出制限が続く中でも、やり方を工夫して、何としてもお待ちいただいている販売店やお客様に新型車の情報をお届けしたい。魅力あるクルマの提供を通じて経済復興に貢献したい」。米国のメンバーも同じ想いのもとニューヨークオートショーの「プランB」づくりに“奔走”していた。
ニューヨークオートショー延期が決まったのは3月10日。すぐに代替案の検討に入ったものの、感染は瞬く間に拡大し、物理的にクルマを披露できるタイミングは見通せない。外出制限により今できることにも限度がある。一方で、新型車には発売時期があり、披露のタイミングにもデッドラインがある。そんな難しい状況のなか、慎重に議論を重ね、「オンラインリビール」「5月上旬の撮影」を決めた。
新型シエナの撮影場所はTMNAの本社、スピーカーは販売担当役員のボブ・カーターだ。従業員は全員在宅勤務なためキャンパスには誰もいない中での撮影となった。もうひとつの撮影場所は、トヨタブランドを統括するジャック・ホリスの自宅だ。ガレージの前にクルマを置き、新型ヴェンザをアンベールしてみせた。
「自分の近所が映画の撮影スタジオみたいになるなんて、信じられないよ。楽しいね。今回のやり方では、皆、好きな時に映像を見れば良い。お客様は今までよりも深くメッセージを受け取ってくれるかもしれないね」。ジャック・ホリスは笑顔でこう語る。
多くの人が移動を制限される中での「ステイホーム」、そして「フロムホーム」の新車発表。今回、危機の中で様々なアイデアを出し、今回のやり方に行き着いた。TMNAの担当者は「このプロセスで多くの学びを得た。オートショーの有無にかかわらず、今後の商品発表はもっとフレキシブルでクリエイティブにできる」と語る。特に広大な国土を誇る米国では、オンライン化はむしろ、もっと多くの人とつながるチャンスなのかもしれない。トヨタイムズでも今後の「ニューノーマル」に着目していきたい。