「記者会見か株主総会のようですね(笑)」
清華大学生の熱量あふれる質問に答えた20分。
4月下旬、社長の豊田は中国北京市にいた。
地下鉄と自転車を乗り継いで向かった先は清華大学。
清華大学は「チンホワ(清華)」という愛称で呼ばれる中国を代表する総合大学である。
特に、優秀なエンジニアを多数輩出することや、論文の引用件数の多さから、米国のマサチューセッツ工科大学(MIT)などと並び、工学系分野の世界最高レベルの大学としても知られている。
4月21日、清華大学とトヨタは、新たに「清華大学―トヨタ連合研究院」を設立することになり、豊田は次のようにコメントした。
「昨年5月」とは、李克強首相と安倍晋三首相によるトヨタ自動車北海道訪問を指している。李首相に対し、豊田がe-Paletteコンセプトや燃料電池技術を紹介したことが、今回の連合研究院の設立につながったのだ。
そして、清華大学の邱勇(キュウユウ)学長からの招待を受け、豊田の大学訪問が実現した。
ここで少し話は逸れるが、冒頭の大学までの移動の話に戻る。
豊田は、その町のモビリティの変化を感じ取るために、海外に行った際には、出来るだけ現地の「生活の足」を利用している。社内の担当者は事前に配車を準備するものの、本人は公共交通機関、自転車のほか、運転が可能な国では自走で移動してしまう。今回だけではなく、昨年も中国・深セン、ノルウェー・オスロ、ドイツ・フランクフルト、アメリカ・プレイノといった場所で、様々なモビリティを使って移動する豊田の姿が見られた。
さて、そうこうして清華大学に着くと、400人の学生がGRの旗を振って集まってくれていた。
さっそく、豊田流の“会話”が始まる
世界最高峰のエンジニアの宝と言われる学生たちも、この日は全く難しい顔はせず、86の試乗会やステージトークを五感で存分に楽しんでいるようだった。
こうして、豊田の清華大学への初登校は終了した。
未来への貢献
試乗会の翌日、邱学長はじめ大学関係者との間で、「清華大学―トヨタ連合研究院」設立に関する調印式が行われた。
調印式後、清華大学の講堂に向かうと、500人を超える学生たちが集まっていた。
最初に、豊田がスピーチを通じて伝えたことは、中国への感謝と、未来のモビリティ社会をつくるために、これからもトヨタは中国に貢献していきたい、という想いだった。
続いて、楊斌(ヤンビン)副学長の進行によって、学生とのQ&Aセッションが始まった。
事前に学生から寄せられた質問数は、なんと180問以上。トヨタのトップがどの様なことを考え、行動しているのか。何とか聞き出そうとする学生たちの熱量を是非、動画で感じていただきたい。この学生達のパワーこそ、清華大学の本当の強みであり、未来をつくる原動力なのかもしれない。