2019.10.11

詳報・秋の労使協議会 トヨタは変われるのか ぶつかり合う本音

10月9日、秋の労使協議会が愛知県豊田市のトヨタ自動車本社で開催され、夏と合わせた2019年の年間賞与(ボーナス)が満額で決着した。

前回のトヨタイムズの記事(INSIDE TOYOTA #36)では、回答に込めた豊田章男社長の想いを中心に交渉の様子を紹介した。今回は、前回触れることのできなかった回答に至るまでの労使の主なやり取りを紹介する。

協議は次の4つのテーマについて話し合われた。

1.変わりつつある職場の状況
2.まだ変わり切れていない職場の状況
3.会社から見た各職場の実状
4.競争力強化に向けた人材育成・人事制度の見直し

時間軸に沿って、紹介していく。

1.変わりつつある職場の状況

午前9時、秋の労使協議会が始まった。組合側230名、会社側120名が出席する張り詰めた空気の中、組合が議論の口火を切った。

<田原工場の事例>
組合がまず話したのはLEXUSを生産する田原工場(愛知県田原市)におけるコンパクトクロスオーバーSUV NXの生産立ち上げだった。8000人の従業員を抱えながらも、生産台数が減少し、一部のラインでは一直生産を余儀なくされていた田原工場にとって、新規車種の生産は何としても成功させなければならない一大プロジェクトであった。各機能、各部署が本来の役割を超えてNXの生産立ち上げにチャレンジした田原工場の事例から議論がスタートした。

【組合】

近藤さん

当初、NXを田原で立ち上げると決めた際には、立ち上げは8月までかかると言われていましたが、「それでは遅すぎる」という伊村工場長の号令のもと、何ができるかを工場一体となって考えました。これまでは生技(生産技術)が設備を導入し、製造がクルマをつくるという役割分担でしたが、組織や機能の間のキャッチボールのムダを減らし、即断即決で早く立ち上げ準備を進めていくため、製造・生技、技術員・技能員がひとつのチームになって取り組みました。製造が、これまで経験したことのない生準(生産準備)業務に取り組み、一方で、生技、さらには仕入先様から様々なノウハウを共有してもらいました。加えて、通常稼働日の一部でラインを停止し、8月連休に実施予定だった工事を前出しで行うために、一致団結で稼働率を上げるなど、できることは何でもやる、という姿勢で取り組んだことで、立ち上げを3か月前出しすることができました。

こうした取り組みを進めるにあたっては、工場の損益情報を見せてもらったことで、「自分たちは稼げていない。このままでは将来の仕事を任せてもらえない」という強い危機感を持つことができたことや、トヨタ自動車九州さんの現場が、古い設備を改良し、大切に使い切った上で、少人数で、お客様のニーズに合ったLEXUS品質を実現されていることを自分たちの目で確認し、改善へのこだわりでも田原は明確に負けているということを一人ひとりが認識したことが大きかったと思っております。

そうした反省を踏まえた上で、今回「お客様のために」という同じ目標に向け、ワンチームで取り組む中で、かつては前後工程として反発し合うことの多かった生技・製造の互いの意識が大きく変わりました。生技からは「限られたリソースでNXの超短期立ち上げを実現するために、製造の力を貸してほしい」という声、製造からは「田原をトヨタに必要な工場と思ってもらうために、何でもがむしゃらに取り組みたい」という声が出るなど、今まではなかった前向きな姿勢が一人ひとりに染み渡ってきました。今回、短期生準をやり切ることができたことで、「できない理由を探すのではなく、やるためにはどんな方法があるのか」と知恵をしぼり考えることが大切であることに改めて気づかされました。

ただ、難しい短期生準をやり切ったという達成感もある一方で、まだまだトヨタ自動車九州さんに負けていることも十分 分かっており、非常に悔しい思いをしています。田原でクルマを作ることは決して当たり前ではないという、仕事があることに対する感謝の気持ちを忘れず、これからも、まだまだ改善を積み重ね、田原全体、さらに関係する部署、また仕入先様から学びながら、取り組みを加速していきたいと思います。そして、もっと強い「One田原」を目指して、先日社長にも見ていただいたような、最前線で改善を引っ張る生準のメンバーだけでなく、それを支えるメンバー、日々の生産に取り組むメンバー、田原で働くすべての人たちがもっとやりがいを持って働けるようにしていきたいと思います。

この組合の発言に応じたのが、果敢に挑戦を続ける従業員を間近で見てきた伊村隆博 田原工場長だった。生準期間を3カ月短縮して立ち上げた組合員らの努力を「トヨタのものづくりの底力を見せることができたと思う」と称え、「職場の能率や工数など目先のことにとらわれず、トヨタ全体のこと、グループ全体のことを考えて、一緒にチャレンジしていこう。私自身もこのような取り組みを積極的にリードしていく」と組合に呼びかけた。

<業務職の事例>

田原工場での取り組みに続いて、組合から、昨年5月に東京地区の業務職メンバーで発足させた、職場のムダを減らす改善活動の取り組みを紹介した。トヨタの社員は事技職(総合職)、業務職(一般職)、主に生産などの現場で働く技能職という3職種で構成される。「実務のプロ」である業務職が実務者目線で事務用消耗品の有効活用や、会議室の利用改善などを実施して、職場の経費削減、従業員のコスト意識の醸成を図ってきた。

【組合】

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春の労使協の議論をへて、在宅勤務やキャリアカムバックの導入、職種に関係なく、これまで以上に成長を認めてくれる新人事制度など、一人ひとりがよりいっそうチャレンジできる、働きやすい環境を整えていただき、ありがとうございます。何よりも、「業務職に光を当てていただけたことが本当にうれしかった」という感謝の声が多くあり、改めて組合としてもお礼申し上げます。

こうした前向きな受け止めが具体的な行動に現れてきております。例えば東京支部では、昨年から自主的に立ち上がった業務職による改善活動ワーキングを一段レベルアップさせ、部署の垣根を越えた21人のメンバーがムダ低減に向けた活動に取り組んでいます。さらには、さらなる改善のネタや働き方の参考となる事例はないかと、自分たちでTRI-AD(トヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント)など同じ地区の会社・オフィスを現地現物でベンチマークし、「決してトヨタが一番ではないということを痛感した。私たちももっと頑張らなくてはいけない」という声も上がったと聞いています。

この活動を通じ、身の回りの些細な事から出来ることはたくさんあるということを改めて実感しています。まだ道半ばですが、「時間・お金のムダを徹底的に削減するという意識を持つ」、「こうしたことはむしろ業務職こそが率先して取り組むべき」という機運が高まってきました。

こうした取り組みや想いがある一方で、悩んでいる声も届いています。例えば、一くくりに業務職といっても、専門的な事技職の領域まで業務が広がっている方もいれば、定型的な庶務業務のみを担当している方もいる中で、職場の特性や与えられている役割によって、「主体的に描けるキャリアプランが限られている」といった声や、10年近く同じ仕事に従事している方からは、「これからも同じ仕事を続けていては、現実的にキャリアアップは難しいのではないか」という声もあります。自身のキャリアのことなので、自分たちでしっかり考え、それを上司に伝えていくことがはじめにやるべきことではございますが、活躍の幅を広げる意欲ある方には、少し目線を上げた目標や業務分担のしかた、時にはローテーションといった選択肢を検討いただければと思っております。そして、今度入る新しい制度が本当に生きた制度になるような、一人ひとりのステップアップの形を一緒になって考えていただけるとありがたいと思います。

この発言に対しては、議長であり、総務・人事本部長の河合満副社長が答えた。「特に事技系職場において、それぞれの仕事の『現場』と『実務』を支えてくれているのは、まさに、業務職の皆さんだと改めて感じました。その高い実務力を活かし、さらに改善し続けていただくよう、年次に関係なく、本当に頑張っている人に報いる新人事制度を組合の皆さんと話し合いを重ねながら、導入していきたいと考えております」

2.まだ変わり切れていない職場の状況

ここから労使双方がさらに踏み込んだ議論を展開していく。総務・人事本部の桑田正規副本部長は、本年昇格した基幹職との懇談会を続ける中で感じていた会社としての問題意識を話したあと、組合にこう投げかけた。「幹部職、基幹職が変わらない限り、会社は変わりません。変わり切れていない職場・人について、特にマネジメントへの課題を含めて、組合の問題意識をお伺いしたい」。これに応じる形で、光田聡志書記長がストレートに意見をぶつけた。

【光田聡志書記長】

光田さん

変わりきれていない職場を見ると、大きく次の2つのような実態があるのではないかと考えております。1つ目に、目の前の業務で手一杯で、なかなか今のやり方を変えたり、チャレンジしたりする余裕がない。2つ目として、何かを「やめる」、新しく「はじめる」とき、実行するまでの根回しが大変で、また、上手くいかなかった時に、チャレンジを褒められることはなく、過度に責任だけを問われがちという点です。こうした中、お客様のために何かを変える提案があっても、現状維持で、既存のやり方を続けてしまうということになっているのではないかと思います。

こうした実態は、お客様や現場から離れれば離れるほど顕著となり、突き詰めると、「仕事の優先順位付けがきちんとできているか」、あるいは「安心してチャレンジできる職場風土があるか」ということと強く関連しているというのが職場の感覚です。

組合員も7つのムダのうち、特に「マンネリのムダ」をよくよく考え、優先順位をつけて既存のやり方を漫然と踏襲せずに変えていく努力をもっとしていかなければなりません。また執行部としても、その働きかけはもちろん、一人ひとりがもっと声を出しやすいように、職場に入って課題解決をしていきたいと考えています。我々は現場最前線の組合員目線で、「これはおかしい」と思ったことは素直に声に出してマネジメントの皆さんともっと相談をすることをやっていきたいと思います。

マネジメント皆さんには、強いリーダーシップで、「これを最優先にしよう」、「これは遅らせてもよい」、時には「これはやめる」等、特に初期段階での優先順位付けを行っていただきたいと思います。そうしていただけることで、組合員もさらに自信をもって動き出せます。

また、豊田社長が常々言っているように、「責任は私が取るのでどんどんやろう」と、各職場のマネジメントの皆さんからも同様に後押ししてもらえると、迷いなくやることができます。

別の切り口になりますが、先ほど会社からもご発言があったとおり、変わろうとする職場の雰囲気にマイナスの影響を与える幹部職・基幹職の方がいらっしゃるという声も職場から聞いています。特に部下を持たない主査・主幹の方について、一部で適切な業務付与がされておらず、能力を最大限発揮されていないのではと思える状況がございます。

同様の声は、組合員から一部の主任に対しても上がっています。組合としては、変わり切れていない各人の状況に向き合って、変われない状況は何なのか一つひとつ解消し、一緒に前向きに動けるよう、寄り添っていきたいと思います。会社におかれましても、活躍しきれていない、主査・主幹に寄り添ってどう変えていくのか、一緒に考えていただきたいと思います。

3.会社から見た各職場の実状

組合の強い問題意識を受け、まず口を開いたのはLEXUSカンパニーの佐藤恒治EVP(Executive Vice President)だった。「特に開発は技術が高度化し、専門性が高まったことで、業務の細分化が進み、狭い世界に閉じこもるようになりました。結果としてお客様が遠くなり、大きな目的を共有できず、チームワークや全体最適といったトヨタの良さが失われつつあると感じます」と胸の内を語った。一方で、カンパニーをまたいだ連携など、変化の兆しを感じていることにも触れ、「最も大切なことは、我々はクルマ屋であるということを忘れないことです。もっといいクルマをつくろうという情熱を持ち続けることです。自身の専門領域だけでなく、視野を広く仕事ができる、クルマ屋の育成に私自身も率先して取り組んでいきます」と決意を述べた。

続く生産企画本部・TPS本部の朝倉正司本部長も率直な想いを語った。

【生産企画本部・TPS本部 朝倉正司本部長】

朝倉さん

「変わり切れていない職場」の状況として指摘された点については、主に事技系職場のマネジメントの課題と考えております。話戻りまして、生産系の話をしたいと思っています。

田原工場のNXリンク生産、売れ筋のクルマを早くお客様にお届けすることを通じて、「自分達の仕事・職場を守る」ために必死に取り組んでいただきました。ありがとうございました。裏を返せば、既存のクルマの台数では、2直の稼働体制を守り切れなかったということ、誠に申し訳なく思っています。多くの部品を九州より運び、多くの物流費がかかっていて喜んでばかりはいられません。

売れなければクルマをつくることはできない、ということをあえて申し上げたい。生産を預かる立場として、クルマの企画について、「トヨタの都合や理屈」ではなく、これまで以上に真に「お客様第一」という観点で、「クルマが売れて、作って、儲かる」本来の企業体質に戻していきたいと思っています。企画して、開発して、生産ラインを起こしたはいいが、価格・機能など商品力の観点で、お客様のニーズに合わず売れずに、現場が一直生産になってしまう。そういうことのないように全社を挙げて労使ともどもよりいっそう努力していかなければならないと思っています。

一方、製造現場についても、まだまだ数々の問題があることも事実であります。それらを踏まえ、製造現場の皆さんへお願いがあります。今、トヨタは生き残りをかけ、CASEや電動化が急速に展開される中、莫大な投資が必要となっております。その原資を稼ぎ出すのは工場の皆さんです。一秒一円にこだわった原価低減や標準作業の徹底、人の入れ替えや応援者が多い中でのめんどう見など、苦労をかけておりますが、現在の取り組みをさらに愚直に進めてほしいということです。これらはまさしくトヨタの強み、DNAであると思います。まだまだ、物流や品管職場には改善の余地が多く、改善、改善、また改善と進めていくことがあると思っております。

また、田原のNXリンク生産が成功したのは、仕入先の皆様や多くの関係者の協力があってのことです。成り立ったことへの感謝を忘れてはなりません。そして、今後も厳しい日程での海外工場の立ち上げが続くことも踏まえ、いつまでも国内外どこでも活躍できる健康の維持、そして技と人間力をますます磨いていっていただきたいと思います。

3つ目は、今回の田原工場での取り組みのように、「新しいこと」に大胆にチャレンジし続けてほしいということです。今後は、クルマの電動化が進む中、「つくるもの」が急速に変わっていきます。こういった流れにも、現場もタイムリーに追従していく必要があります。厳しい状況であることは十分に理解しておりますが、苦難が知恵を生むことも事実。これは我々の先輩たちがなしえてきたトヨタの歴史でもあります。現場の底力、改善力をより高めていっていただくことを期待しております。

4.競争力強化に向けた人材育成・人事制度の見直し

議論は最終局面に入る。会社の屋台骨を支える人材育成とそのベースとなる人事制度の見直しがそのテーマだ。

【議長・河合満副社長】

河合さん

本日の議論では、特に変わりきれていない職場、従業員の皆さんの状況を踏まえて、社内の課題が浮き彫りになったように思います。こうした課題を踏まえると、「本社が企画、意思決定を行い現場で遂行する」というやり方が、今の大変革期においては、マッチしなくなっているのではないでしょうか。本来トヨタの強みは「現場で、即断即決で意思決定をする」ということにあったはずです。創業以来大切にしてきた、「トヨタらしさ」の根幹でもある、自らの仕事の「現場」に足を運び、自ら考え、判断し、行動できる人材を十分に育成しきれていないと反省もしております。

ここで議長の河合が語り出したのは、仲間とともに困難を乗り越えた自らの体験だった。声の震えをこらえながら、心から伝えようとする河合の話に会場の空気が変わっていく。

ここで、私が部下とともに挑戦し、ともに成長できた実例を紹介します。鍛造特有のロット生産から一個生産へのチャレンジをいたしました。私は次長でした。やりたいことに集中できる立場でしたので、何か大きな挑戦がしたいという試みから、私の考えを、上司や生技に話しましたが、「絶対に失敗し、車両が止まるからダメだ」と言われました。どうしても私は諦めきれず、自分の職場の技術員2人に話しました。彼らは、一日考え、次の日に「一緒にやろう」と言ってくれました。1人は高卒で、独学で、大変勉強家。設備のことを知り尽くしていますが、知っているだけに頑固で上司に対してもズケズケものを言う。上司やまわりから敬遠されていて、孤立状態でした。なぜか私は彼とすごく馬が合って、仲良しでした。見通しは7割しかできない、不安の毎日で眠れない日々が続きましたが、我々3人で必死になっている姿を見て、現場の人たちが、日々、日増しに手伝ってくれました。おかげで思った以上のラインが完成しました。私が今ここにいるのも、ともに挑戦してくれたこの2人の頑張りがなければ、ここにいなかったと思います。孤立していた彼は、多くの現場の人や業者の方々からプロとして認められていました。頼りにされていました。彼はちょうど5年前、御嶽山の噴火で亡くなってしまいましたが、5年たった今もなお、九州の大分まで墓参りをしてくれる若者がいます。ご両親が「トヨタで働いて本当に良かった」と感謝をしてくれています。

トヨタで働く全員で「現場主義」を取り戻し、自ら考え、実現していく実行力と、周囲のメンバーを巻き込む人間力を兼ね備えた人材を、「現場主体で育成する」べく、トヨタの人づくりを見直していきたいと考えています。

河合の発言を受けた桑田が、具体的な取り組みを説明する。

【総務・人事本部 桑田正規副本部長】

桑田さん

具体的には、3つのことに取り組んでまいります。

①評価基準の見直し
・全職種・資格の評価基準を「人間力」と「実行力」とする
・関係者や部下の方など、周りの人から信頼されているか、頼りにされているか。そうした「人間力」を評価の大きな柱にする
・「相手を尊重し、相手の話を聞き、自分の思いを素直に表現する」ことで、関係する方々と「ワンチーム」で仕事を進める

②「現場主体」へのシフト
・特に、新人や若手は、それぞれの職場での「現場」に配置。現場で自ら考え、手を動かし、現地現物で専門性を徹底的に磨き上げる
・現場で人間関係を築く中で、謙虚に学ぶ姿勢や思いやりの精神を身につける
・環境変化や、異常をいち早く感じ取り、間違っていれば、声を上げ、すぐに方向転換する

③「トヨタの原理原則」を徹底
・TPSと原価の作りこみは、トヨタに関わる全員が身につけるべき作法であり、創業期から、長年の試行錯誤を経て到達したトヨタの経営哲学
・誰のための、何のための取り組みなのかという目的を明確にしたうえで、原価低減を考える。実践できる人材が育つように、全面的に支援
・ムダを減らして、浮いた時間を「上司と部下の生きた会話」や「現地現物」などに充てられているかよく確認する

今申し上げた3点が、「トヨタらしさ」を取り戻すための取り組みだと思います。必ずやり遂げる覚悟をもって、会社として取り組んでいきたいと思います。そして言うまでもなく、これをうまく機能させるベースは上司と部下の信頼関係であり、部下一人ひとりに、真正面から向き合う本音のコミュニケーションやフィードバックができるよう、上司・部下のコミュニケーションをしっかりと進めてまいりたいと思います。

組合の決意

すべての議題を終え、西野勝義執行委員長が語った決意は次のとおり。

【西野勝義執行委員長】

西野さん

私からは回答をいただく前に、改めて一言申し上げたいと思います。本日、さまざまな職場の実態について議論してまいりましたが、改めて、春の労使協以降、多くの組合員が意識、行動を変え、一歩を踏み出しています。その一方で、職場の中には、まだまだ意識が変わりきれていなかったり、行動に移せていないメンバーがいることは、先ほどお伝えしたとおりです。

これまではそういったメンバーに対しても、「声を聞き」「寄り添い」そして「守る」のが組合の役割だと考えておりました。しかしながら、この100年に一度の大変革期においては、これまで通りのやり方で「守る」のではなく、全ての職場で変わり切れていない組合員と徹底的に話し合い、執行部と職場役員が力を合わせ、「変えて」いかなければならないと考えております。簡単ではないことは承知しておりますが、「変える」ことが結果的に、彼ら彼女らのためになるという信念のもと、一緒に考え、悩み、行動していきます。

「相互信頼に基づくトヨタの労使関係は、誇るべきもの」と先輩から伝えられてきました。私達にはこれを次の時代にも受け継いでいく責任があります。ただ、こうした関係は決して、何の努力もなく当たり前に与えられるものではなく、自らの努力によって守っていかなければならないものであります。私自身、春の労使協以降、改めてこのことを強く肝に銘じました。

労使の立場は異なります。しかし、私たちは、「互いの立場から互いのために努力しあう、そのために本音で徹底的に議論する」というトヨタの労使関係の原点に立ち返ったうえで、労使の交渉のあり方についても、形骸化している対立ありきのようなスタイルを見直し、作り直すなど、今後のあり方を労使で考えていきたいと思います。

回答を終えて 社長の想い

西野執行委員長の決意を受けて、社長の豊田が回答に込めた想いを語ったことはトヨタイムズで既に紹介した通り。(INSIDE TOYOTA #36)異例の事態となった2019年のトヨタの労使交渉。豊田が最後に語りかけた言葉で今回の記事を締めくくりたい。

社長

春の交渉から本日までの間、組合の皆さんが、もう一度、自分たちの現状を見つめなおしてくれたのではないかと思います。会社側も議長である河合さんが自分の経験を皆さんに伝えてくれました。心から伝えていただいたと思います。本日の話し合いは、これまでよりも労使がお互いに正面から向き合えたのではないかと感じました。皆さん、今日のこの場で感じたことがあると思います。それを素直に職場の仲間に話してください。それが「共通の基盤」に立つためのスタートだと思います。素直に話せない環境は皆で直していきましょう。以上です。