いわゆる"春闘"がスタート。トヨタではこれを"話し合い"と呼ぶ。いったい、何を話し合うというのか。
いわゆる“春闘”がスタート。トヨタではこれを“話し合い”と呼ぶ。いったい、何を話し合うというのか。トヨタイムズでは、労使の話し合いの行方をレポートしていく。
2019年2月13日、トヨタ自動車労働組合より、会社に対し、賃金・賞与(ボーナス)についての要求の申し入れが行われた。トヨタでは、他の一般的な企業と同様に、2月から3月にかけて、労使での交渉が行われる。
一般的には、春交渉の目玉は何といっても、賃金がいくら上がるかと言うベア(ベースアップ)だ。大手企業が早い時期に回答し、その金額を参考に中堅企業が回答、そして製造業全体に波及していくという構図だ。
そういった中で、トヨタは昨年、国内製造業の労使がベンチマークする「ベア」を非公表とした。
昨年、ベアを非公開にした真意とは
社長就任以来、豊田は春交渉の意義を「話し合い」と繰り返す。そして、労使のあり方をクルマに例えて語ることがある。
「会社と組合は“クルマの両輪”。会社は組合員の幸せを願い、組合員は会社の発展を願う。そのために本気で、本音で、真剣に話し合う。そこに意味があると思っている」
こうしたトップの想いもあり、昨年のベア非公表の真意について、人事担当役員の上田はこう振り返る。
「春の交渉で最も大切なことは、“話し合い”であり、職場の実情、会社の競争力、困りごとを本音でぶつけあうこと。しかし他社、特に中小企業の皆さんの現状としては、『うちは大手-αだから』で決まってしまっている。本来、大事にすべき“話し合い”に重きを置かれなくなっているのではないか、賃金の水準もトヨタが回答した金額がキャップになっていないか、と悩んだ結果」
本気で、本音の話し合いを目指して
今回、申し入れにあたり、組合、会社は以下のように発言した。
上田は、本年のトヨタの春交渉(労使協議会)の位置づけについて、こう解説する。
「トヨタの労使協議会の特徴は、いかに会社を良くしていくか、 競争力を強化していくかを労使で真剣に話し合うこと。したがって、賃金や賞与の具体的な金額についての議論は、ギリギリまでしない。このスタンスは、従来から変わらないが、昨年から労使で大きく変えてきたことがある。それは、もっと本気で、本音の話し合いを追及すること。双方の話し合いを労使協議会限りにせず、月に1回、会社役員が執行部や職場役員、約700名と直接話し合う機会を新たに設けた。直近の話題を副社長が説明し、質疑も行う。また工場や職場など、現場に近い所での話し合いは、その場で意思決定できる役員(副社長など)が参加し、その場で解決できるものは決めていく。議長の河合が申しているとおり、今回はまさに、そうした年間を通じて取り組んできたことの総決算の場」