トヨタイムズ

TOYOTA & SPORTS
トヨタとスポーツ

1.

トヨタとスポーツの歴史

女子ソフトボール部の優勝を祝う社長の豊田

2011年は、トヨタにとって苦難と試練の年でした。
東日本大震災からの生産復旧がようやく整い、グローバルで生産の挽回に入った矢先の同年秋、トヨタはタイでの洪水被害に苦しんでいました。約4カ月にわたる大洪水が発生、同地のサプライチェーンが寸断されたのです。トヨタの3工場の製造ライン自体は無事でしたが、周囲の部品工場の多くが浸水の被害に遭い、トヨタのアジア最大の生産拠点は事実上、麻痺していました。
社長の豊田章男も現地入りし、事態の収拾に陣頭指揮をとる中、日本では、トヨタの女子ソフトボール部が、日本リーグ2連覇をかけ、決勝を戦っていました。9回まで決着がつかず延長戦へ。トヨタは2点の先制を許し、反撃に残されたのはわずか1イニングのみ。随時、戦況の報告を受けていた豊田は、正直、「負けたかな。帰ってきたらどんな言葉をかけようか」と考え始めていたと言います。しかし、結果は・・・。3点を入れての劇的なサヨナラ勝ち。見事リーグ2連覇を達成しました。
豊田は、「胸が熱くなりました。試合に勝ったからではありません。ベンチの選手たちも、応援団も、全員がチームの勝利を信じて、決してあきらめることなく、声援を送り続けたことがたまらなく嬉しかったのです。」とし、当時をこう振り返ります。「当時、会社は厳しい状況でした。震災、タイの大洪水と続き、会社が戦っている時だったからこそ、決してあきらめない姿に勇気づけられました。」
リコール問題、東日本大震災、タイの洪水被害と困難な状況が続く中、「TOYOTA」の文字を胸に、会社を背負って戦うチームの姿は、従業員を鼓舞し、あきらめずにチャレンジすることを促す「力」を持っていました。

(日刊工記事「トヨタがスポーツの大切にする理由」参照) (経済ジャーナリスト 安井孝之氏記事「トヨタが今でも社内駅伝を続けている理由」参照)

会社設立と同年に誕生した長距離陸上部

トヨタとスポーツの歴史は、トヨタ創業の年、1937年にまで遡ります。創業者の豊田喜一郎が、会社を設立した同年に「陸上部」を創設しました。トヨタでは、会社と運動部はつねに共に存在し、お互いが欠かすことのできない存在になっているのです。

社長の豊田章男は、「80年前、創業者の豊田喜一郎は、自動車部とともに、運動部をつくりました。喜一郎はなぜ、運動部を作ったのか。もっとよくするために決してあきらめない「ネバーギブアップ」の精神。仲間のため、自分以外の誰かのために闘う「フォア・ザ・チーム(For the Team)」の精神。先人たちは、運動部の闘う姿に、クルマづくりに格闘する自分たちの姿、何より「トヨタらしさ」を重ね合わせていたのではないでしょうか。」と語ります。

創部当初の柔道部・剣道部

最初は陸上部のみだったトヨタの運動部も、創業の翌年である1938年には柔道部、39年にはサッカー部、41年にはラグビー部…と増加、戦時中には一時、活動を停止したものの、戦後、すぐに活動を再開し、46年には男女のバレーボール部など4部が設立されたのをはじめ、51年までの5年間で12部が新設されました。

1965年全豊田総合競技大会 開会式

当時の目標は国体や実業団の各大会でしたが、トヨタグループ各社にも次々と運動部が設立されたことを受け、さらに試合の機会を増やすべく、51年には年1回グループ各社対抗で覇を競う「全豊田総合競技大会」が始まりました。(同大会は95年まで継続。)

1964年の東京オリンピック・パラリンピックの開催で、日本国内全体でも、スポーツの機運が一気に高まり、企業スポーツが盛んになっていきました。この頃、国内の企業チームの競技の場として「日本リーグ」が編成され、トヨタも設立に関わりました。この日本リーグの登場は、日本経済界の企業同士、横のつながりができたという意味でも、大きな役割を果たしました。また、ちょうどこの頃、トヨタが海外進出を始めた時期とも重なり、トヨタのスポーツの取り組みも事業と共に海外へ広がっていきました。

トヨタの名誉会長である張富士夫は、かつて「グロ-バル化や多様化など様々な環境変化により世界が急速に変わる中、スポーツは、万国共通で、調和をもたらし、相互に理解を深める役割を果たしてくれると感じます。スポーツは、アスリートだけでなく、応援をするサポーターの士気も高め、また地域社会との交流を深めることにも役立ちます。日々新しいチャレンジをする中、スポーツによって我々は団結し、より高い目標に向けて頑張ることができます。」と述べています。

元従業員の柔道・谷亮子選手、社長 張(当時)へのシドニー2004での金メダルの凱旋報告

1970年代になると、トヨタの運動部は、東京にはバスケットボールチーム、愛知県田原市(田原工場所在地)には陸上競技部、静岡県裾野市(東富士研究所所在地)にはサッカーチームという具合に、トヨタの国内主要拠点に35種類もの実業団チームを擁するに至りました。これらチームには、個人でも、世界の舞台で戦えるアスリートも出てきました。所属するアスリートの活躍が大きくなるにつれ、トヨタの従業員にとっても、スポーツがより大きな関心事になっていきました。

トヨタのクラブ活動

1980年代半ばになると、トヨタは海外でのスポーツ活動をさらに拡大し、「トヨタ ヨーロッパ/サウスアメリカ カップ」のメインスポンサーに就任しました。この大会は、欧州サッカーリーグ、南米のサッカーリーグそれぞれの優勝チームが世界一のクラブチームの座を競う、世界一のクラブチームを決めるサッカーの夢の祭典。1984年に「インターコンチネンタルカップ」、さらに2000年代半ばには、「TOYOTAプレゼンツFIFAクラブワールドカップ」に名を変えても、2014年までの約30年間、トヨタはメインスポンサーとしてイベントを支援し続けました。

2004年開催 FIFAワールドカップ

2.

オリンピック、パラリンピックのワールドワイドパートナーそしてスペシャルオリンピックスのグローバルパートナーへ

FIFAクラブワールドカップのスポンサーを終えた翌年の2015年、トヨタは、国際オリンピック委員会、国際パラリンピック委員会とワールドワイドパートナー契約を結びました。初のモビリティカテゴリーのパートナーとして、2017年の平昌大会から2024年のパリ大会まで計4大会について契約、中長期にわたり、グローバルのスポーツ祭典を引き続き支援していくことになりました。

2015年、オリンピック・パラリンピックの
ワールドワイドパートナーシップ調印式

今日、トヨタには、硬式野球、陸上長距離、女子バスケットボール、女子ソフトボール、スケート、ビーチバレーボールの強化運動部6部および、26部+1団体の一般運動部があります。サーカーJリーグの名古屋グランパスや男子バスケットボールBリーグのアルバルク東京のように、プロ化したチームもあります。また従業員アスリート、パラアスリートをはじめ、個人競技・団体競技含め、スポーツに関わる従業員も多く雇用しています。中には、オリンピックやパラリンピックなど、様々な国際大会で活躍し、優秀な成績を残している選手も数多く所属していますし、往年の名選手で実業の主要ポストについている人も多くいます。

トヨタの従業員である佐藤圭太選手、芦田創選手は、リオ2016パラリンピックの男子400mリレーで銅メダルを獲得しました。

障がい者走り幅跳び 芦田創選手

障がい者短距離 佐藤圭太選手

IOC、IPCのワールドワイドパートナーに就任して初めて迎えた2018年の平昌冬季大会では、トヨタは20ヵ国から50名以上の選手を「チームトヨタアスリート」として支援。従業員アスリートである宇野昌磨選手が男子フィギュアスケートで、銀メダルを獲得。

また、同大会では、森井選手やドイツのアンドレア・エスカウ選手に対して、2人の要望に応える競技用用具の開発にチャレンジし、森井選手は銀メダル、エスカウ選手は金2、銀3、銅1の計6メダルを獲得しました。

平昌2018での男子フィギュア
宇野昌磨選手
(Atsushi Tomura / Getty Images
for
Toyota Motor Corporation)

チェアスキー 森井大輝選手
(Lingtao Zhang / Getty Images)

クロスカントリースキー
アンドレア・エスカウ選手
(ドイツTMG所属)

トヨタは、スポーツは人と人の距離を縮めるものであって、決して競い合うことだけが目的ではないと考え、各国でスペシャルオリンピックス*(以下、SO)の活動にも積極的に関わっています。2017年には、「グローバルパートナー」に就任しました。SOは、「スポーツを通じ、垣根のないすべての人に開かれた世界を実現する」ということを理念として掲げており、障がいのある人とない人が、お互いに相手の個性を理解し合い、支え合う関係を築きながら一緒にプレーをする「ユニファイドスポーツ」を推し進めています。トヨタは、この理念に共感し、世の中に存在する様々な違いを、個性として受け入れ、お互いに尊重し合うことができる社会の実現に向け、少しでも貢献できるよう、SOと共に努力したいと考えています。

* スペシャルオリンピックス :
知的障がいのある人たちに、日常的なスポーツトレーニングと、その成果発表の場である大会・競技会を年間を通じて提供し、社会参加を応援する国際的なスポーツ組織

2018年11月 スペシャルオリンピックス
グローバルパートナーシップ調印式

トヨタは、創業以来、どんなに本業が厳しい状況でも、また、社を取り巻く環境が大きく変わっても、一貫してスポーツの持つ「力」を信じ、スポーツを通じて、従業員の一体感を醸成し、士気を高めてきた歴史を誇りに思うと共に大切にしています。「チャレンジ」「ネバーギブアップ」「チームワーク」「リスペクト」といったスポーツの力は、トヨタが大切にしてきた価値観、企業風土そのものです。世界中で日々、様々なアスリートが地道に、強い意志と忍耐を持って挑戦を続けています。トヨタはこれからも、すべての人が自分自身の不可能に挑戦することが出来る、開かれた社会の実現を目指して、努力を重ねていきたいと考えています。
Start Your Impossible!