トヨタイムズ

トヨタ春交渉2021 #1 分かったつもりになっていたトヨタ

労使交渉 2021.02.24 UPDATE

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何かあったら言ってください。では言ってもらえない

組合からは、出向員から上がった仕入先の困りごとについての声が紹介された。

「トヨタの基準が過剰ではないかと思いつつ、トヨタの基準をいかに満足させるか」に終始していること。

それが原因で、多くの廃棄品を出していること。

10年前のトヨタの担当者に言われた何気ない一言が仕入先の判断基準に大きな影響を与えていることなど、いくつもの生々しい事例が挙がった。

Lexus InternationalとGAZOO Racing Companyのプレジデントを務める佐藤執行役員はレクサスでの事例を紹介した。

佐藤執行役員

レクサスは「最高の品質をお客様にお届けする」ことを目標にやっています。

しかし、逆にそのキーワードが本当の意味で「最高が何か」を見失わせている事例があり、「品質の最適化」や「お客様にとって何が大事か」を見つめ直そうとしています。

一つ事例を挙げると、ある先輩が私のところに、ある内装の樹脂部品を持ってきて、「これはメーカーへ出荷できなかった部品だが、どこに問題があるか言ってみろ」と(言われました)。

渡された部品を見ても、私は何一つ違和感を覚えませんでした。何がダメなのかわからなかったのです。

その(樹脂部品を使う)クルマの生産工場の品質管理部に、なぜダメなのか確認しました。でも、彼らも分からなかった。さらに、仕入先に確認したものの、分からない。

実はその先の2次仕入先で、光の加減でしか分からないような傷を「おそらくハネられるだろう」と自主的に出荷を止めていました。

我々が全く気づけないところで、そのようなことが起こっている。不良率がそれによって高まってしまう。我々が相談してもらえる信頼関係をつくれていないんだと思いました。

これはもうトヨタ単体では解決しない。冒頭550万人の話がありましたが、いろんな人たちと信頼関係を築き、相互連携をしないと解決しない問題が増えていると思います。

今まではトヨタ、仕入先、それぞれが「なんとかしよう」としてきたので、変われない事実がたくさんあるのだと思います。

物流も多くの課題を抱えていると思います。傷付き防止で、物流の梱包はとんでもないことになっています。物流業界と我々が連携すれば、解決できる問題があるかもしれない。そんな時代に入っていると思います。

今日議論があったことを、少し視点を広げて、業界をまたいだ連携をしながら解決していくことを考えてもいいのではないかと思います。

ここまで、仕入先との関係でトヨタが迷惑をかけている生々しい、いくもの事例が挙げられてきた。

そんな中で、生産を担当する岡田執行役員が紹介したのは、仕入先との信頼関係が生んだ、直近のエピソードだった。

岡田執行役員

仕入先との関係に関わる、昨夜入ってきた話です。(写真をスクリーンに映して)これは、ある物流用のパレットに付けられた張り紙の写真です。

福島県沖の地震で、ある会社が被災されました。塗装工程だけ復旧に時間がかかるということで、バックアップをほかの会社にやってもらうことになりました。

(被災した会社の)競合先から知恵をいただくことになったのですが、これがその第1便のパレットです。

張り紙には「これからともに頑張りましょう。一日でも早い復興を祈願いたします」と競合先、トヨタの名前が書かれていました。

申し上げたいのは、トヨタの調達を中心とする最前線のメンバーが、競合先に対しても、被災した会社に対しても、しっかり誠実に接したからこそ、このスピード感でやってもらえたのではないかと思います。

トヨタのためだけにという姿勢でいたら、最前線の段階で信頼を失うことになる。とても550万人には向かって行けなくなる。

それぞれの局面で失う信頼はなくさなければならない。

私たちは、550万分の1です。しかし、私たちと接する人は、私(たち一人ひとり)をトヨタだと思っています。

一人ひとりがトヨタ自動車という自覚を持つことが550万人の1人として大事なのではないかと思います。

これまでに出てきた議論を受け、組合の小野副委員長は次のようにポイントをまとめた。

組合・小野副委員長

組合の声をしっかり受け止めていただきありがとうございます。

ポイントは、前後工程、さらに前の前、後の後までを含めて、支えていただいている550万人の仲間に我々の仕事がどういう影響を与えているのか、分かったつもりではなく、労使でもっと知り合うことから始めませんかということ。

そこで、気づいたことを一つひとつ解決していくこと。

そして、「何かあったら言ってください」では言ってもらえないことをしっかり認識したうえで、自ら気づきに行く。しっかりフィードバックして、何とかしようとする。

佐藤プレジデントから話があったように、自分たちだけでやろうとするのではなく、周辺の仲間と連携して、どう解決していくか議論を進めていくことが必要だと感じました。

どの職場でも当てはまる話なので、各職場で始めたいと思います。

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