ダカールラリー優勝チームインタビュー 「8連覇でもまだ道半ば」

2021.01.19

ダカールラリー市販車部門8連覇! そんなチームの快挙にも、なぜか神妙な顔の三浦昂選手。その意外な理由とは?

南米とサウジアラビアの道の違い

トヨタイムズ
岩浅さんは3年ですよね。3年前は南米でのラリーでした。南米の道とサウジの道に、違いはあるんでしょうか?

岩浅
南米は砂丘(の種類)が違って、壊れる部分も違います。そして南米は、やはり暑かったですね。暑いと水温も上がったりしてクルマには厳しいです。

三浦
南米とサウジ…どっちが厳しいかを答えるのは難しいですが「厳しさの種類」が違うんです。

南米は町が発達しているので、ダカールで使えるルートは舗装こそされていないんですが、生活路でつないであり、WRCで使われるみたいな道も多い。

その代わり、ペルーの砂丘に代表されるように、とんでもないテクニックが要求されるコースもあるんです。運転スキルという意味では南米の方が難易度が高かったりします。

あと暑さとの闘いは岩浅さんが言ってくれた通りです。

サウジは、ダカールラリーの原点に近いと思うんですけど、普段、本当に人が入っていないところを走るので、路面には“とんでもなくでかい石”があったり、突然、穴が開いていたり、常に、あらゆるコーションがあるんです。

自然の地形を見たり、クルマへの入力を感じながら、どうゴールまでマネジメントしていくかを考えなければならないので、総合力が求められますし、おそらくクルマ自体にタフなのはサウジです。

あとサウジはとにかく寒さとの闘いです。夜めちゃくちゃ寒くて…。

トヨタイムズ
南米とサウジではクルマの壊れ方も変わってくるんですか?

三浦
全然違います。サウジは足回りとか、路面入力の負担がすごく大きいです。南米は暑いのでラジエーターとか冷却系への負担がすごく大きいです。

トヨタイムズ
道が違うと「クルマの鍛えられ方」も変ってくるということですね。

三浦
そうですね。個人的な感覚も入りますが、いろんな道を走りきるランクルの役割を考えると、サウジのほうがランクルを鍛えることには向いていると思います。

トヨタイムズ
昨年もサウジの道に苦労したと思います。2年目のサウジに向けて、ランクルを「こう鍛えてきた」という点はあったんでしょうか?

三浦
本当はそれをもっと出したかったんですけど、コロナ禍でテストができなかったので、かなりセーフティに寄ってしまいました。

ただ、サスペンションのレイアウトを見直したり、オートマのギアと合わせたトルクカーブをどう描くかなど、サウジにマッチングさせていき、速く走るより「乗りやすいクルマ」に仕上げた感じです。

極端な言い方をすると「ドライバーが楽して運転できるクルマ」は速いんです。何かをするために苦労しなければならないクルマは最終的にタイムにつながらない…。

サーキットとは違って、穴もあるので、アクセルのオン・オフが激しく起きるんです。それにもちゃんと追従してくれるようなエンジンのトルク性能をまとめたイメージです。

ランクルへの恩返し

トヨタイムズ
今年、走り切った後に「ランクルに恩返しができた」と三浦さんは語っていました。三浦さんがランクルにした恩返しとは一体?

三浦
ドライバーになってからの過去5回は、ランクルの性能に助けられて完走させてもらいました。前回の優勝もランクルに助けてもらったのが大きかったと感じていました。

だけど、今回は自分が「こう運転したい」という想いに対して、ちゃんとできるかどうか、ランクルとコミュニケーションしながら走れました。

「これは、無理じゃないか」と思うところを行けたりもしたので、思いっきりあのクルマを走らせてあげることができなのかなと感じたんです。

そういう意味で、クルマが喜んでくれたらうれしいし、恩返しになったのではないかという気持ちが少しありました。ランクルが、すごくいきいきと動いてくれたと思います。

トヨタイムズ
ランドクルーザーをつくる会社の社員として、ランドクルーザーに対する想いはありますか?

三浦
生活必需品、ライフラインとして必要ということもあると思うんですが、それだけでなく、ランドクルーザーは楽しみを与えてくれるし、困難な道でもワクワク感を抱かせてくれるクルマだということです。そういう思いをお客様にも伝えたいと思いました。

会社員としてダカールラリーに挑むこと

トヨタイムズ
会社員としてダカールに参加しているということに想いはありますか?

三浦
やればやるほどに「社員にこんなことさせてくれるなんてすごいな」と思うんです。

自分が思っていたより遥かにハードでしたが、何が求められるかいっぱい勉強になりました。これをやらせてくれるのはすごいことだし、ありがたいです。

それに対して、自分に何ができるか考えると、乗って感じた喜びや苦労をリアルに伝えて、ランクルをつくる人と一緒の気持ちでいることが大事だと思うようになりました。

それができて、会社が目指している「もっといいランクルづくり」につながるものができ上がったときに初めて恩返しになるのかなと思っています。

中武
貴重な経験をさせてもらい、うれしかった面もありますが、最初はびっくりしました。学んだことを会社で生かせたらと思っていますし、人間的に成長できる面が多かったです。

普段通りにやっている仕事も見方が変わってくるし、気付くことも多く、仕事にも生かせる面が多いと思います。

後輩の育成もそうですし、ダカールを目指している人もいっぱいいるので、応援してあげたいと思っています。

三浦
トヨタ車体や福岡トヨタだけでなく、ランクルに関わる人全てととらえてほしいんですが、ここ2~3年、トヨタでランクルの開発に関わる人と日常の仕事をさせてもらう機会が増えました。

そのときに、とんでもなくみんなランクルが好きなんだなということをひしひしと感じるんですよね。

それほど好きな人がつくったクルマだということを、ユーザーやランクルを知らない人にも知ってほしいという気持ちがすごくあります。

ドライバーはいろんな場所に露出して発信できる立場なので、そういうことも伝えられたらと思います。

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