トヨタのコラム
2022.08.02

トヨタを支える開発拠点、東富士研究所の過去、現在、未来

2022.08.02

東富士研究所は、50年以上トヨタの研究開発を支えてきた主要な開発拠点のひとつ。香川編集長は、自動運転の取材で一度訪れたことがある。しかし今回の目的は、東富士研究所の過去と未来にスポットライトを当てることだ。

通常は公開されない、トヨタの技術の粋が詰まった研究所の中を、どこまで取材できるのだろうか。

「東富士研究所の歴史と、現在行われている未来への技術の開発、この2つを取材していきたいと思います!」と香川編集長は力強い足取りで研究所の門をくぐった。

「クリーンなエンジン」からはじまった研究所の歴史

建物の入り口で待っていてくれたのは、東富士研究所所長の山中章弘氏。さっそく建物内を案内していただく。最初に訪れた部屋には、壁一面に年表が貼ってある。ここでまずは研究所ができてから50年あまりの歴史を振り返る。

研究所が設立されたのは1960年代。ちょうど世の中で大気汚染が社会問題化しはじめていたタイミングだ。アメリカでは排ガス規制がはじまろうとしており、東富士研究所の主要な開発テーマは「クリーンなエンジン」となった。追い打ちを掛けるように、70年代前半にはオイルショックが世界を襲う。人々は燃費がいいエンジンを求めるようになり、東富士研究所でも開発が進められた。東富士研究所は、その設立当初から環境技術に力を入れて取り組んできたのだ。

香川
もう50年近くも前から、例えば後々のハイブリッドの芽になるようなエンジンや、あるいは排ガスを抑えられるようなエンジンの研究をしていたと。

山中
そうですね。そういった環境技術が直噴エンジンとか、無段変速機(CVT)、あとは電動化やハイブリッド、燃料電池といった技術に進化していくわけです。

部屋の片隅にあるガラスケースの中に、重要そうな書類があるのを香川編集長は見つけた。これはアメリカが排ガスを規制した際、トヨタが世界で初めて認証を取得したが、その証書のコピーなのだと山中所長はいう。そこに書かれた日付はなんと1968年。開発の歴史を感じる貴重な文書だ。隣にある論文はトヨタが米国で発表したもので、排ガスを抑える技術に関する内容。なんとトヨタの名誉会長、豊田章一郎氏も著者に名を連ねている。トヨタがどれだけ環境技術に力を入れていたのかが分かる貴重な資料だ。

1965年からはじまり、2020年まで続く年表には、研究所の歴史が細かく書き込まれている。そんな年表をしばらく眺めていた香川編集長が、あることに気付いた。

香川
モータースポーツ活動もあるわけですね。そういえば。

山中
実は環境技術というのは、モータースポーツとも深く関わっているのです。先日フランスで行われたル・マン24時間レース、世界耐久選手権(WEC)でトヨタは5連覇を果たしましたが、そのクルマにはハイブリッドの技術が生かされています

香川
97年にハイブリッド(の市販車)が登場してからですね、と。

山中
そうですね。電動化がはじまりました。環境の技術が、モータースポーツにもどんどん入り込んで来ているという形になっています。

香川
モータースポーツとも関わりがあるとは思いませんでしたね。

山中
今日はこの後、モータースポーツで使われているハイブリッド技術の開発現場を見ていただきたいと思っています。

レースで求められるのは「究極の高効率」

ということで、早速開発現場を訪れた香川編集長。案内してくれるのはGRパワトレ開発部の小島正清氏と、小川輝氏。開発棟は1980年代後半に建てられ、トヨタ自動車のモータースポーツ開発の拠点になっている。中でもパワートレーンの開発を担っており、まさに中枢部といえる。廊下の一角には、過去ル・マン24時間レースなどに使われたエンジンがずらりと並べられていた。時系列で並べられたエンジンを見ると、過去数十年のエンジンの進化が分かる。

そしてエンジンの隣に掲げられていたのは、創業者である豊田喜一郎の「オートレースは唯単なる興味本位ではなく、日本の乗用車製造事業の発達に必要欠くべからざるものである」という言葉。創業時からモータースポーツ起点のクルマづくりを提唱していたトヨタ。モータースポーツへの挑戦は、まさにDNAに刻まれているといえる。

トヨタは2012年からル・マン24時間レースに再チャレンジしている。そのとき使われたハイブリッドシステムが展示されていた。こういったモータースポーツの過酷な現場で鍛え上げられたハイブリッドシステムが、市販車に還元されているのだと小川氏は説明する。

小川
当然レースなので、速く走ることが僕らの使命ですが、それだけではありません。例えば1周だけ速く走っても、ピットに入って給油していたらライバルにどんどん抜かれてしまいますから。

香川
そうですね。

小川
そうすると、与えられた燃料でいかに長く走るか。

香川
なるほど。ピットインの回数を減らすということですね。

小川
そうです。結局、(レースでは)究極の高効率を目指すのです。その結果が、市販車の燃費向上につながるわけです。

香川
なるほど。

そして、いよいよ香川編集長は、モータースポーツ開発の心臓部に足を踏み入れた。「映しちゃいけないところもあるので」というリアルな企業秘密が詰まった現場だ。

そんな中、GRパワトレ開発部の小早川智志氏が見せてくれたのは、パワートレーンのシミュレーションシステムだ。パワートレーンとは、パワーを出す部分の総称だ。例えば2022年のル・マン24時間レースで優勝を飾ったGR010ハイブリッドであれば、前輪を駆動するモーター、後輪を駆動するエンジン、そしてパワーをタイヤに伝えるトランスミッションなどがパワートレーンに含まれる。

ここでは、シミュレーターを使ってレースで走る状況を再現しながら、ハイブリッドシステムのチューニングをしている。ハイブリッドはモーターで加速するだけでなく、減速時に運動エネルギーを回収してバッテリーを充電することもできる。そこで、ここではシミュレーターを使って24時間走らせながら、いかに速く、以下に高効率で走れるかを追求している。ル・マン24時間レースでは、レーシングカーが時速300キロメートルで走行しながら、実にきめ細やかな調整を行っているのだ。

さらに、このシミュレーション技術を使って市販車のパワートレーンをテストすることもある。またここで開発したシミュレーションシステムを愛知県豊田市の本社に展開して、開発に生かすこともあるという。モータースポーツから生まれたノウハウは、「仕事のやり方」も広げているのだ。

香川
「仕事のやり方」というのは、どういうことですか?

小川
いまここでやっているように、実際にクルマを走らせなくとも開発ができます。だから、例えば「富士スピードウェイで試験したいが雨で走れない」という場面でも、ここでは全部できるんです。

香川
じゃあ、もうテストドライバーの方がいらなくなっちゃうんじゃない。

小川
それが、やっぱり最後は人の感覚も必要です。

次のエリアには、レーシングカーのハンドルが置かれていた。目の前にはいくつものモニターが並び、グラフや数値、そしてコックピットからの映像が流れている。レースでは、なんと2000から3000ものデータを使うのだという。そんな大量の情報から「エンジンが危ない」などトラブルの芽をいち早く見つけ、対策していく。

「ぜひ今回は少し試していただければ」の言葉に甘え、香川編集長がステアリングを握る。ボタンを押すと、エンジン音が高まり、映像の速度が上がる。「もう、この部屋に寝泊まりします!」と香川編集長も大喜び。

香川
ドライバーの方が全部手動でやっている作業が、我々が乗っている例えばプリウスのような市販車にはすでに内蔵されていて、勝手にやってくれているということでしょ。そして我々はステアリング操作だけで、同じような操作を安全性が検証された状態で使えるわけでしょ。

すでに我々は自動運転車に乗っているようなものじゃないですか!50年前から。

次に、実際にエンジンをシミュレーションする機械を見せてもらう。「点検もするんでしょ。日本のすべてのクルマの大元になると考えると、一番重要な点検だね。」と香川編集長。

山中
次は、カーボンニュートラルを実現する燃料電池の技術を見ていただきたいと思います。

香川
いよいよ未来に向かいますね。ここまではまだ現代、過去のにおいがしますけど、ついに未来ですね。

バスもトラックも船も!広がる燃料電池の活躍の場

燃料電池の開発現場を案内してくれるのは、商用ZEV基盤開発部の真鍋晃太氏と茂木一成氏。目の前にはMIRAIのカットモデルが置かれていた。エンジンルームの真ん中に置かれているのが、「FCスタック」と呼ばれる燃料電池システム。さらに合計3本の水素タンクが足元や後席下に埋め込まれているのが見える。このタンクに貯蔵された水素と大気中の酸素を使って発電し、その電気でモーターを回して走るのが燃料電池車(FCEV)だ。

FCスタックは、「セル」と呼ばれる薄いシートを330枚積層し、そこで水素と酸素を反応させて発電する。ガソリンとはまったく無縁の電子部品世界だ。

さらにアニメーションを使ってセルの仕組みを説明してもらう。セルの両側に水素(H2)と酸素(O2)を流すと、反応して水(H2O)ができる。そのとき電子を放出し、それが電気となる。

後ろの試験装置には、開発中の次世代セルのテストを行っていた。商用ZEV基盤開発部の山岸雅和氏によると、期待した性能がきちんと長期間にわたって出せるのかを試験中だという。

真鍋
いかに1枚のセルからパワーを取り出せるか、という性能を上げています。

香川
それは、まだまだパワーに伸びしろがあると踏んでいるわけですね。なるほど。

商用ZEV基盤開発部の小澤優羽氏は、燃料電池システム全体のテスト現場を見せてくれた。お客さまが実際に使用するシーンを想定し、走行に必要なパーツが全部そろった状態でテストを行っているという。

さらに真鍋氏が紹介してくれたのは、MIRAIの燃料電池部分だけを取り出して、さまざまな場面で発電機として使えるようにした「FCシステムモジュール」だ。水素をつなげば電気を取り出せる、というように簡単に水素のシステムを使えるよう工夫されている。MIRAIではバラバラに搭載されているシステムをまとめてモジュールとすることで、フォークリフト、バス、トラック、船、電車など、いろいろな目的で利用できる。

香川
先ほどの1枚1枚のセルの出力が上がれば、パワーが増大して、もっと大きなものでもいけるということでしょ。

真鍋
そうですね。パワーアップもそうですし、このスタックをたくさん積んでもいけますね。

香川
下手したら、宇宙船にも持って行けるということでしょ。理論上は。

真鍋
いま月面車のプロジェクトがあるのですが…。

香川
取材させていただきました。あれも燃料電池で?

真鍋
そうですね。

次に燃料電池システムを使った展開例として、燃料電池で動く「FCEVコースター」を見せていただいた(コースターは、トヨタが手がけるマイクロバスの名前)。車両下部に燃料電池システムを搭載し、水素を貯蔵するタンクは4本搭載する。商用ZEV基盤開発部の山田龍氏によれば、電気が豊富に使える燃料電池の特長を生かし、後部には移動オフィスを設置する予定だという。

隣にあった大型バスも、燃料電池で動く。すでに都バスとして街中を走行しているFCバス「SORA」を改造し、水素の搭載量を増やしてある。商用ZEV基盤開発部の種藤和也氏によると、小型バッテリーをたくさん積んで災害時に停電した被災地に出向き、電気を配ることを想定した車両だ。バス自体はトヨタ製だが、電気を配るためのバッテリーはなんとホンダ製。メーカーの垣根を越えて社会貢献に取り組んでいるのだ。

未来のモビリティを支えるインフラの実験場

次に香川編集長が訪れたのは、モビリティ用の新しい実験場。「100年以上前、馬車から自動車に変わったとき、道路もクルマが走りやすいように変わりました」と説明してくれたのはR-フロンティア部の北浜謙一氏。自動運転や電動化など、クルマが大きく変わっている今、それに合わせた新たなインフラも必要だ。

さらにクルマとインフラが一体となり、クルマが街につながることで、安全性や利便性などの新たな価値を生み出せるはず。アイデアを実際の街で試す前に、動作を確認し、安全性を実証する必要がある。そんなインフラの実験のためにつくられたのが、この実験場なのだ。

例えば道路沿いのポールの上を見ると、カメラやセンサーがところ狭しと設置されている。自動運転車は、物かげや死角から飛び出してくる歩行者や自転車を検知しづらい。それをインフラ側のカメラで検知し、自動運転車に伝えるという実験をしている。

また道路には、センサーとライトが一体となった装置が埋め込まれていた。人や自転車が近づくとそれをセンサーが検知し、ライトの色でドライバーに伝えるのだという。

たくさんある、充電の形

モビリティの電動化が進むと、課題となるのが充電だ。その充電をいかにスムーズにするか、という研究開発も行われていた。なんと充電を自動化しようというのだ。

第1電動先行開発部の上田広一氏と佐藤正明氏が紹介してくれたのは、充電の自動化だ。充電を自動化できれば、クルマ単体のみならず、街全体、あるいは社会全体でエネルギー管理を最適化できるようになる。

香川編集長の目の前で、ロボットアームを備えた充電ロボットが充電器を持ってクルマに近づき、自動で充電する様子を見せてくれた。このロボットを使えば、街にある既存の充電器でも自動充電を実現できる。

第2電動先行開発部の吉住啓氏と第1電動先行開発部の橋本俊哉氏は、駐車場に置くだけで自動充電可能になる据え置きタイプの充電器を見せてくれた。クルマが駐車されると自動的に充電器のアームが伸び、クルマの底部にあるコネクターに接続される。さらにスマートフォンのワイヤレス充電のように、無線で充電するタイプもあった。なんとこの技術を使えば、走りながらの充電も実現できるのだという。

香川
これを日本中の道路に敷けば、(充電ステーションなどで)充電しなくてもいいってことでしょ。

吉住
そういうことになります。

香川
そこまでいくってことですよね。

吉住
はい。将来のことを考えると、そういった技術が使えるのではないかと思います。

香川
お金はかかるだろうけど、日本中にこれを敷ければ天地をひっくり返すような何かが起こる気がしますね。

第1電動先行開発部の橋本俊哉氏は、走りながらの充電技術をみせてくれた。
もし走りながら充電できれば、充電が不要になるのはもちろん、車載電池も小さくできるためクルマを軽くでき、たくさんのメリットがあるという。

香川
随所に夢が膨らむ未来が見えますね

山中
子どもにも喜んでもらえると思います。

香川
こういうものが当たり前、という世代も見てみたい気がしますね。ガソリンが当たり前だった世代としては。ずいぶん進化しましたね、この10年くらいで。

山中
はい。

次々登場! 新たなモビリティの選択肢

このモビリティ実験場には、新たなモビリティもあるという。見せてくれるのは、先進プロジェクト推進部の金田哲弥氏と渡邉紀尚氏。ここで開発しているのは、クルマより低速で走る自動運転のモビリティだ。上に物を乗せるタイプと、台車をけん引するタイプの2種類がある。例えばけん引型は、後ろに引っぱる物を変えることでいろいろな役割を持つモビリティに変身する。つまり、選択肢を提供することにつながる。

けん引型のモビリティは、左右2輪だけで走行する未来的な形。自動連結・切り離しが可能で、さまざまなサービスをお客さまのもとに届けられるという。「Bridge-Palette」と名付けられたモビリティは、電力供給機能もあり、電気がないところでもサービスを提供できる。

先進モビリティシステム開発部の福留秀樹氏が見せてくれたのは、クルマをけん引するデモンストレーション。シェアカーやレンタカーなど、「そこに行かなければ使えない」サービスを、お客さまの元へ届けてしまおうという発想だ。クルマをジャッキアップし、自動運転で引っ張っていく。

香川
昭和の世代からすると、まさしく自分のクルマがレッカーされていった瞬間ですね。

福留
狙いとしましては、自動運転ができないクルマでも自動で運べるようにしようということです

さらに別のパターンもある。自動運転の機能を持つけん引型モビリティが先導することで安全にクルマを移動させるというもの。これもまた新たなモビリティの形だ。

次に、先進デザイン開発室の渡部卓也氏が見せてくれたのは「Round-Palette」という多目的モビリティ。あえて歩行速度より遅く移動することで、移動の新たな価値づくりに挑戦している。「歩くのはしんどいけどクルマには乗れない、という場面は世の中にたくさんある」と渡部氏はいう。例えば大型のショッピングモール内の移動だ。Round-Paletteはそんな場面を想定している。さらにショッピングモールなら、閉店後は人を乗せることない。そこで上部を荷台に替え、荷物の移動に使うこともできる。

「遠隔運転」は自動運転と並ぶ、もうひとつの選択肢

「研究の方は進んでいますか」と香川編集長が問いかけたのは、自動運転の取材でお世話になった、クルマ開発センターチーフプロフェッショナルエンジニアの曽我雅之氏。今日は「遠隔運転」を見せてくれるという。

現在、物流や配送を担う方々の負担がますます高まっている。それを解決するため、リモートで運転できるようにしよう、というのだ。もちろん、開発は簡単ではない。「よくリモート会議で通信が切れてフリーズすることがありますよね」と曽我氏。だがクルマの運転でそんなことを起こすわけにはいかない。またどうしてもタイムラグがあるため、通常のクルマのように運転するのは難しい。そういった課題の解決に取り組んだ成果を見せてくれた。

窓の外に、1台の赤いクルマが止まっている。これをこれから運転するのだという。だが運転席は部屋の中。遠隔操作で運転するのだ。先進モビリティシステム開発部の須田理央氏と車両技術開発部の尾崎崇氏によるデモンストレーションを見ると、まるで人が乗っているかのように滑らかに走行している。携帯電話の電波を使い、室内のコックピットと外のクルマをつないでいるのだ。

いよいよ香川編集長も運転に挑戦。ハンドルやブレーキは実車と同じものを使っているため、運転の感覚は実車に近いはずだという。「ブレーキが結構効くな」と少し戸惑いながらも、順調に運転する香川編集長。細い道もすいすいと走行して見せた。

香川
この遠隔運転を普及する意義がいくつかあるとうかがいましたが。

曽我
自動運転と、“にんべん”のついた自働運転を我々は考えています。遠隔で人が入ることで、自動運転を普及しやすくするという狙いがまずひとつ。

それからもうひとつは、遠隔ならではの意義があります。災害が起きてなかなか人が入れない、でも探しに行かなければならない、というときですね。災害現場はがれきがあって決められたコースを走れず、自動運転では難しいことがあります。そんなときに人が操縦する遠隔運転は助かる、と。

あとは、ドライバー不足、ドライバーの負担を減らすということです。ドライバーがいなくて困っているとき、違う場所にいるドライバーが助けることができます。

香川
ありがとうございます。

いくら遠隔運転のアイデアがあっても、これまでは実験する場が限られていた。だがモビリティの実験場ができたこと、電波などの技術が進化したことでできるようになった。

ここで生まれた技術の種は、モビリティの実験都市たるWoven Cityへとつながり、いずれ日本全国へと展開されていく。その最初のステップとなるのが、この東富士研究所なのだ。

大事なのは、世界中のお客さまのために「選択肢を残す」こと

「東富士研究所がここまでいろいろな選択肢を広げているとは思いませんでした」と香川編集長。4年前に豊田社長が「モビリティカンパニーにモデルチェンジする」と宣言して以来、東富士研究所も生まれ変わらなければいけない、と山中所長は考えた。これまでのようにクルマ単体の開発だけではなく、世の中や社会とつながり、SDGsをはじめとする社会の課題も見ながら「未来をつくる」ための技術開発を進める方向にかじを切った。

今日1日取材して多彩な技術を目の当たりにし、「本当におもちゃ箱ができているな」と感じたという香川編集長。とはいえひとりのクルマ好きとしては、エンジンの開発がどうなるのかも気になってしまう。「(未来の技術とエンジン技術という)2つの矢印は、同じように残されていくんですよね?」という質問に、山中所長は「カーボンニュートラルの観点からすると、ガソリンだけで動くエンジンは減っていく」という。一方で、水素のようなカーボンニュートラルな燃料で動くエンジンは残っていく、と見ている。モータースポーツやFun To Driveの世界では、ワクワクするサウンドを放つエンジンを今まで通り求めるお客様もたくさんいると信じているからだ。だから、選択肢を狭めずに両方の開発を進める、と山中所長は力強く語った。

豊田社長は常に「選択肢を残す」と言い続けている。東富士研究所の所長として、山中氏はどう感じているのだろうか。

山中
選択肢を増やすというのは、世界中のお客様に応えるため。それが理解できれば、選択肢をきちんと増やして世界中のいろいろなお客さまに喜んでいただけるものを開発しなくてはいけないというマインドが根付くと思います。

香川
そこは社員全員に理解されているということで、その言葉の影響力は大きいということですね。

山中
はい、とても大きいと思います。

香川
選択肢を増やしますよ、彼(豊田社長)は。まだまだ。思いも寄らない選択肢を。

山中
それをどんどん受け止めて、選択肢が狭まらないように我々は努力することなのかなと思います。

香川
現場で狭めてはならない。社長が持っている選択肢をそのままの形で保存して、なんならもっと増やしてお返しするくらいの思いでいる、ということでよろしいですか。

山中
はい。

香川
もういま録画されましたが、よろしいですか。

山中
はい!

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