

トヨタ工業学園に入学すると、厳しい訓練と共同生活の毎日が待っている。学園生たちは、なぜこの学校を志望したのだろうか。どんな思いで毎日を過ごし、何を目指しているのだろうか。リアルな学園生の姿を知るために、香川編集長は、授業に潜入。さらに寮の部屋まで訪れ、学園生の生の声を聞いた。
トヨタ工業学園に入ったそれぞれの理由

編集長がはじめに訪れたのは1年生の教室。市川惠斗さん、大橋天さん、日髙零さん、都築宇さんが質問に答えてくれた。
- 香川
-
トヨタイムズ編集長、香川照之です。今回は、トヨタの企業内訓練校、トヨタ工業学園を取材してみたいと思います。どうしても聞きたいんだけど、なぜこのトヨタ工業学園に入ったかっていうのを。
- 学園生
-
はい!(挙手)
- 香川
-
じゃあ、はい。
- 市川
-
はい。自分は、中学校まで親にお世話になって、親に負担をあまりかけたくなかったので。
- 香川
-
偉いなー。
- 大橋
-
今まで、母子家庭で育ててくれた母親のために、親を安心させて自立していきたいと思いました。
- 日髙
-
クルマ好きということもあって、自動車会社で働きたいと思っていたので、トヨタを選びました。
- 都築
-
リーダーズを見て、このトヨタのことを知りました。
- 香川
-
はっ。リーダーズというドラマも役に立ってますね!
- 都築
-
はい!
実習室で入学の理由を答えてくれたのは、2年生の松井瑠菜さん、綾田香介さん、蛯原楽さん。
- 松井
-
父が学園卒だったので、その影響で入りました。
- 香川
-
2世がついに出ましたよ。
- 綾田
-
自分は父がトヨタ自動車で働いてて、その父に憧れて。
- 香川
-
ここ2世組、続きましたねー。
- 綾田
-
はい。
- 蛯原
-
自分もなんかトヨタ自動車が素晴らしい会社だと思って。
- 香川
-
それちょっと今なんか取ってつけたようなことを言ってる?大丈夫?
- 蛯原
-
はい。
副社長を目指しています

「副社長になりたい」という高い志を話してくれたのは、専門部生の中内恭太さんだ。中内さんの視線の先にあるのは、もちろん学園の大先輩、河合満副社長の背中だ。
- 香川
-
将来、こういうことやりたいって言いたい人?
- 学園生
-
副社長になりたい(学園生がいる)。
- 香川
-
副社長になりたい?君が未来の副社長だからだ。
- 中内
-
はい。
- 香川
-
という意思を持っているのは本当ですか?
- 中内
-
持ってます。はい。性格的にやるからには1位を目指すという性格なので。
- 香川
-
なるほど。
- 中内
-
社長は無理なので、副社長目指そうと思います。
- 香川
-
何をすることによって、副社長にまでいけると?
- 中内
-
周りと一致団結して、何かひとつのことを成し遂げるという。当たり前のようで、とても大事なことをもう極め抜くという。
- 香川
-
極めていきたい。

食堂を訪れると、卒業を間近に控えた3年生たちが編集長を出迎えてくれた。
- 香川
-
うわ、いっぱい。すげえいっぱいいる。こんないっぱいいるよ、ほら。
- 学園生
-
こんにちは。
- 香川
-
こんにちは。皆さん、何年生?
- 学園生
-
3年生です。
- 香川
-
3か。あと2週間だな。
- 学園生
-
今は、早く卒業したいです。
- 学園生
-
(笑)
- 香川
-
早く卒業したい。
厳しくも楽しい共同生活

学園生が共同生活を送る学生寮で香川編集長を出迎えてくれたのは、寮指導員の磯貝康平さん。
- 香川
-
こんばんは。
- 磯貝
-
こんばんは。
- 香川
-
よろしくお願いします。香川と申します。
- 磯貝
-
よろしくお願いします。磯貝康平と言います。
- 香川
-
磯貝さん?
- 磯貝
-
はい。
- 香川
-
磯貝さんは、ここの立場は?
- 磯貝
-
寮指導員という立場で、訓練生の生活の支援だったり、指導だったりを主にしています。
指導を受けている学園生を発見した編集長。何と言われたのかを聞いてみた。答えてくれたのは3年生の宮崎力也さん。
- 宮崎
-
床のほこりを取ってないって。
- 香川
-
ほこり?ほこりっていうのはどこまで取らなきゃいけないの?
- 宮崎
-
部屋の隅まで全部取らないといけないんです。
- 香川
-
毎日やるんですか、それって?
- 宮崎
-
毎日やらないといけない。

次に編集長は、磯貝さんの案内で学園生の部屋を見せてもらうことに。はじめに訪れたのは3年生の鬼頭佑真さんの部屋。
- 香川
-
お邪魔します。どんな部屋かというと、こんな部屋。これはいいねー。ここでさ、自習とかもしたりするの、勉強とか?
- 鬼頭
-
自習だったり勉強は、そうですね、コミュニケーションスペースとかで、机とかもあるので、そこで一緒に勉強教えあったりもしてます。
- 香川
-
でも、みんな仲いいね。今日、食堂で座っている位置をつぶさに見たんだけど、誰一人、1個空けたりとかしないじゃない?
- 鬼頭
-
そうですね。
- 香川
-
やっぱりビーッて隣同士に、普通にこの距離感って、仲いいんだなと思って。そこまで仲いいと、この1人部屋って逆に寂しくない?
- 鬼頭
-
寂しいんですけど、会える時間でいろいろしゃべったりして、何とか寂しくないように。
- 香川
-
寂しくないように?
- 鬼頭
-
はい。
- 香川
-
うん。でも、友情を培って、いいよな?

同じく3年生の大水翔太さんは、豊田社長の年頭あいさつに思うところがあったようだ。
- 香川
-
どうですか、社長の年頭あいさつを聞いて。
- 大水
-
「ボトムアップ」という話を初めて聞いて。「下に立つ人たちが、自分からやっていかないといけない」というのを聞いて、僕たちが変えていかないといけないなというのを考えました。じゃあ、学園生に僕たちが何ができるんだろうと考えて、今度、新入社員も入ってくると思うんですけど、そういう人たちに差を見せつけて、火付け役じゃないですけど、自分が発破かけれたらいいのかなと。
- 香川
-
素晴らしい責任感だね。すごいねえ。ついに学園の中に、社長サイドの言葉を話す男がいましたよ。
共同生活の様子を編集長に教えてくれたのは、3年生の丸田倫也さん、是安玲さん、そして2年生の重松英寿さんだ。
- 香川
-
香川です。よろしくお願いしますね。(寮生活に)ルールはありますか?
- 重松
-
自分たちでごみ出しとかをやったりして。
- 香川
-
曜日が決まっていて、決まった場所に出すっていうことでいいのかな?
- 是安
-
はい。
- 香川
-
じゃあ、マンションと同じような感覚ってことですね。
- 重松
-
そうですね。
- 是安
-
ルールではないんですけど、このカーペットも、最初来たときは会議室みたいに机が並んでる状態したが、もっとくつろげるスペースがいいなということで、寮指導員に「寝転がるスペースがほしいです」と言って、今のカーペットを(敷いてもらいました)。
- 香川
-
それはあなたが言ったわけ?
- 是安
-
はい。そうですね、寮委員会で。
- 香川
-
素晴らしいね。
- 是安
-
「ソファがほしい」とていうのも、今ちょっと相談しているところです。
- 香川
-
そうだよね。
- 磯貝
-
それは僕たちと訓練生との戦いというか。
- 香川
-
その場合、費用はどこが持つことになるんですか?
- 磯貝
-
費用なども考えて、相談してるという感じですね。
- 香川
-
それも相談。半々にするかもしれないし、おまえたちもそのために積み立てろとか言うかもしれないし。
- 磯貝
-
はい。
- 香川
-
そうか、そりゃソファ欲しいよね。
- 丸田
-
ほしいです。
- 磯貝
-
この子たちの前で言うことじゃないですけど、そこを自分たちで考えて、大人に提案してくるっていうのも、ひとつの育成になると思うので。僕はずっと待ってるっていう感じですね。
- 香川
-
あー、待ってるって。ほら、待ってるってよ。アイコンタクトを送ってるよ。
これまでの人生で最も濃い3年間だった

3年生の後藤亮太さんは、2週間後に迫った卒業式で卒業生代表としてあいさつをすることになっている。どんな学園生活だったのか、振り返ってもらった。
- 香川
-
香川です。
- 後藤
-
後藤です。お願いします。
- 香川
-
この学校に入って、一番よかったなと思うところは何でしょう?
- 後藤
-
自分は今、高校生の3年間で、手当をいただいて、職場でも実習をしています。普通の高校で生活を送ってたら絶対体験できないようなことを、職場に行って、社会人として自分が配属される前から、3年間そういうことを経験できました。この3年間で得たものは多くて、本当に18年間生きてきた中で、一番濃い3年間だなと思っています。
- 香川
-
なるほどね。
- 後藤
-
自分としても大人に近づいたなという感じで、3年間、早くこういうことを経験できたのが、僕はよかったと思います。
- 香川
-
今日、僕は半日しか拝見していませんが、あれだけのことをなさってるんでしょうから、毎日ね。それはもう大人以上ですよ。あれができない大人がどれだけいることか。誇らしいと思いますよ。本当に誇りに思って、トヨタの正社員になってほしいと僕は思っています。どういう将来、自分の図を描いてますか?
- 後藤
-
僕は、「自分が作りたい職場」というのがあります。いろいろな職場を回ってきたんですけど、その中で、職場に行って、ただ言われた業務をこなして帰るという、ただそれだけの生活よりは、職場にいくのが楽しいと思えるような、そういうこだわりを持った職場を、僕は作りたいと思っています。
やっぱり、何も考えずに作ったクルマと、そういうふうに楽しみながらっていうか、みんなで切磋琢磨しながらこだわったクルマのほうが、同じ1台でも、その価値が違ってくると思うので。 - 香川
-
うん、ほんとだよね。
- 後藤
-
そういうところで、自分が職場のリーダーになったときに、ときには厳しく怒るっていうのも必要だと思うんですけど、それでもやっぱり、職場に来たいなと思ってもらえるような職場が作りたいなと。そういう将来を、僕は描いています。
- 香川
-
なるほど。一方で社長が「クルマを作るだけの会社じゃない」と、こういうことも言ってるわけですよ。あなたはクルマを作りに会社に入るわけだけど、その2020年の初頭に社長はクルマづくり会社から脱すると。もっと大きなところに行くと。ウーブン・シティというものを実現させると。実証実験の都市を作ると。その未来の展望に対しては、率直にどう思いましたか?
- 後藤
-
僕、年頭挨拶で初めてウーブン・シティについてのVTRを見たんですけど、素直に感じたのが、すごいなと思って。もうゲームの中の世界のような。
- 香川
-
そうだね。
- 後藤
-
はい。
- 香川
-
僕もそう思った。
- 後藤
-
はい。これを本当に実現できるのかなと思ったときに、ひとつでもいいから、僕もそのウーブン・シティを開設する上で、何か携われたらな、と感じました。
- 香川
-
偉いね。「社長、頑張ります」って言っときなさい。
- 後藤
-
はい。社長、頑張ります!

- 香川
-
皆様、今日はありがとうございました。えーほんとに…
- 全員
-
ありがとうございました!
- 香川
-
せーの!
- 全員
-
トヨタイムズ!