トヨタのコラム
2020.03.16

トヨタのモノづくりを支えるトヨタ工業学園とは?【トヨタ工業学園取材】

2020.03.16

香川編集長が、3年間のカリキュラムを通してモノづくりのプロを育てるトヨタ工業学園を訪問。学園生たちに話を聞いてみると、誰もが礼儀正しく、しっかりと自分の言葉でハキハキと考えを語ってくれる。ここでは一体どんな風に人材育成が行われているのだろうか。そしてどんな人材を排出しているのだろうか。それを知るため、編集長は学園長の深津敏昭氏と卒業生たちに話を聞いた。

トヨタの若い技能者を育成

香川

はじめまして。香川でございます。

深津

おはようございます。トヨタ技能者養成所の学園長をしております、深津と申します。今日は1日よろしくお願いします。

香川

よろしくお願いいたします。一体どういった学校なんでしょう?

深津

トヨタの若い技能者を育成するところになっております。今日1日、いろいろ説明をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

香川

よろしくお願いいたします。学生は何人ぐらいいるんですか?

深津

約500人ぐらいいます。

香川

割といるんですねえ。500人。

深津

はい。

香川

あの、普通の高校にあるような体育の授業とかは?

深津

もちろんあります。

香川

例えば、国語、数学、英語とかっていうのも?

深津

そうです。通信制教育で高校の資格を取れるようになっておりますので、3年間通信教育を受けると、科学技術学園という高校の免許(工業高校機械科卒業資格)がいただけると。

香川

で、全寮制なんですか?

深津

全寮制です。(※自宅通勤可の場合もあり)

香川

はあー。(全寮制の理由は)規律ですか?

深津

規律ですね、はい。人間力、人格を磨く。

香川

この学校を卒業して、トヨタに皆さん正社員として就職するんですか。

深津

はい、正社員として就職します。

香川

それは、ほぼ100パーと言っていいんでしょうか?

深津

そうです。学園に入学するイコール社員です。

香川

あ、もう逃れられないんですね。

深津

逃れられない(笑)。

香川

逃れられないんですね、社長の下から!

深津

(笑)。

香川

じゃあ皆さんもそれを覚悟の上で、その意思を持って受験をしていくと。

深津

はい。

香川

変な話、受験で落ちることはあるんですか?

深津

あります。

香川

あるんですか!

深津

はい。

香川

それは学術的なことで?あるいは態度とか…。

深津

学力もありますけれども、「たくまし度」ということがありまして。やる気だとか元気だとか、そういうのも入学の評価の対象になっています。

香川

元気を何で測るんですか?入学試験のとき。

深津

面接です。

香川

はー。僕、一発で落ちてますねえ。

深津

いやいや、そんなことはないと思います。

香川

当時の僕だったら、一発で落ちてますね。

深津

今年度は315名、高等部で希望者がありまして、採用が135名。

香川

え!そんなに落とすんですか?

深津

いや、まあ、そんなにということではないと思いますけど。

香川

いやいやいやいや…。あ、そうですか。いやいや、びっくり。今のこの少子化の時代に、定員割れギリギリだっていう学校も多い中で、それだけ選ぶ人がいるっていうことは、かなりの精鋭が最初からいるっていうふうに推察できます。

深津

そうですね、歴史も長いので。やはりこの学校に対して、トヨタで一人前に育てていただけるというところが一つの魅力だと思います。

香川

なるほど。歴史については、後々また伺います。

学費は無料で、手当も出る

香川

改めて、設立されたのはいつなんでしょうか?

深津

1938年になります。前身(の設立)がですね。1937年にトヨタ自動車ができまして、その翌年の1938年に前身である豊田工科青年学校。ここから始まりました。

香川

なるほど。ちなみに、全寮制、ほぼ寮で皆さん暮らしている中で、入学してからの学費っていうのはどうなっているんですかね?

深津

学費はありません。手当をもらって、皆さん訓練をしていくということですので。

香川

学費ない!?

深津

はい。

香川

これまたすごいですね。

深津

「トヨタ工業学園に入る」イコール「トヨタ自動車の社員になる」ということですので、彼らの仕事はここで心を磨き、体を作ることが仕事になってきます。ですから、手当をいただきながら、学費はないということです。

香川

え?手当をいただくっていうのは、どっちがですか?

深津

生徒が、手当をいただく。

香川

生徒がもらうんですね!

深津

はい。

香川

そういう学校なんですね。入学します!

深津

(笑)

香川

システムが根底から違いますね、学校というニュアンスとは。

深津

それがトヨタとしての人づくり。「企業は人なり、モノづくりは人づくり」と言われている原点だと思うんです。

香川

はあ。

深津

ですから、モノをつくる技術の前に、モノをつくる心。それは「決して諦めない」という喜一郎のモノづくりの思いを、きちっと情熱を持って。そういう人を作っていきたいという思いが、この学園の原点にあると思うんです。

香川

なるほど。

学んだことを、自分の姿で後輩たちに伝える

次に深津学園長は、昨年の卒業生でトヨタ技能者養成所に所属する水月理央氏を紹介してくれた。水月氏は昨年度の卒業式で、卒業生代表として豊田社長の前であいさつの言葉を読み上げた。
(→ 「学園生」という選択 ~トヨタのモノづくりを支える学校~

深津

それでは、昨年卒業した71期生で、ぜひ紹介したい者がいますので、ちょっとこちらへお願いします。

香川

こんにちは。

深津

技能五輪の木型職種。

香川

技能五輪というのは、どういうものなんですか?

深津

19歳から23歳の中で、技能を競う大会です。

香川

今、これは何をつくられているんですか?

水月

今は曲管といって、パイプが曲がったような形状の加工を行ってました。

香川

最初に入ったときから、この技能五輪の…。うわっ、すごいですね、これ。

深津

これがですね、昨年の全国大会でつくったハンディ掃除機なんだね、これ。

水月

はい。ハンディクリーナーを模した課題です。

深津

これが、実際に加工したものになります。

香川

はあー。これをどれぐらいで作るんですか?

水月

これは10時間で。

香川

10時間で作る!?

水月

はい、作ります。

香川

時間のリミットもあるんですか?

深津

あります。

香川

うわあ、すごいですね。

香川

会社の1人として、僕がいるからこういうふうにトヨタはなるんだという認識、あるいは具体的なイメージというのは、持っていらっしゃいますか?

水月

技能五輪で学んだこと、その中にやっぱり難しい課題とかがあっても、いろんな方法を試して、追求していって、五輪に関わらなかった人とかにも、姿で見せていくというか、そういう部分で広めていけるのかなというふうに感じています。

香川

なるほど。どんな極限になっても、乗り越えられる、乗り越える方法があるに違いないと思う力。そして、そういう方法論や精神力を後輩にも伝えて、周りにも伝えていくということを思ってるんですね。

水月

はい。

香川

なるほど。勝てそうですか?

水月

勝ちます。

香川

頑張ってください、ほんとに。

水月

はい、ありがとうございます。

香川

うわあ、これ、どうやったらこんなんなるの?

深津

ドアトリムです。

香川

はいはい。なるほど。そういうことですな。

将来は街やロボットのモノづくりにも関わりたい

最後に編集長は学園の卒業生で、現在は生産ラインで活躍しているトヨタ自動車堤工場組立部の松原大剛氏を訪問。松原氏もまた2016年の卒業式で、卒業生代表を務めている。

香川

卒業生が実際の生産ラインで活躍されているということなので、その方にインタビューして、取材してみようと思います。香川でございます。よろしくお願いいたします。

松原

よろしくお願いします。

香川

これは今、何を作っているんですか。

松原

このラインはプリウスと、プリウスPHVと、プレミオ、アリオンを生産しています。

香川

学校での体験が、こういうところに一番活かされたという、最も優れているところは何でしょう?

松原

自ら考えて行動する力っていうのを学園で教わりました。

香川

なるほど。あれだけの授業を今見てきたんだけど、ありとあらゆることをやってるから、すべてクルマのことを知り尽くしたようなイメージがあるんですが。

松原

知ってるのと、実際やってみるのは、やっぱり違って。こう見ると簡単にやってるように見えるんですけど、皆さんすごい技術があって。

香川

それでもやっぱり良かったと思えますか?

松原

はい。学園にいたことで、どういうふうに職場で動くべきかっていうのはたたき込まれてきているつもりなので、しっかり後輩たちに伝えるっていうのも僕の責任だと、学園生の責任だとは思っているので。

香川

あー、はい。クルマ好きなの?

松原

僕、クルマ好きです。

香川

トヨタ工業学園に入った理由は何ですか、ちなみに?

松原

その動機は、早く家を出たかったのと、トヨタに入れれば将来は安泰だなって。そんな深くないんですけど、動機は。でも入って、学園でいろんなことを学んでいく過程で、どんどんクルマのこととかトヨタのことが好きになったところはあります。

香川

あんだけ規律訓練が厳しいってことは知って入ったんですか?

松原

はい。そうです。

香川

あー、そう。それは耐えられると思った?

松原

はい。

香川

でも実際、厳しかったでしょ?

松原

厳しいですね。

香川

最初の合宿で、「もう嫌だ」と思いましたか?

松原

はい(笑)

香川

そう(笑)

松原

ボロボロに言われました。

香川

ボロボロに言われた。そうだよね。ずっとここでやっていかれると思いますけど、この部品を次作りたいとか、このクルマとかっていうのは具体的にあるんですか?

松原

トヨタがずっとクルマを作っているかって、今、社長が考えていらっしゃる街のことだったり、ロボットのことだったり、そういうモノづくりにも関わっていきたい、というのはあります。

香川

もし、ウーブン・シティに来いって言われたらどうしますか?

松原

行きたいです、僕。

香川

行きたい?

松原

はい!

香川

そうですか。社長、1票入りましたよ、松原くんが。

松原

(笑)

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