

TRI(Toyota Research Institute)取材中の香川編集長が案内されたのは、試作品を制作するラボ。3Dプリンターをはじめとした最新機材を備え、アイデアをすぐに形にして機能するか検証できる。高速で試作を繰り返して作り上げる、ラピッドプロトタイピングと呼ばれる手法だ。ギル・プラットCEOの案内で、TRIの研究開発を支えるラボの内部を見学した。
3Dプリンターで何度も改善を繰り返す
- ギル
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試作品制作ラボへご案内します。
- 香川
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おじゃまします。わ、すごい。ここはなんですか?
- ギル
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ここは、試作品をすぐに作れる場所です。
- 香川
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その速さの秘訣はなんなんですか。
- ギル
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3Dプリンターを使うことで素早く、試作品を作れるんです。それだけだなく、ロボティックス部門や自動運転部門の新しいアイデアへの対応もしてもらっています。
- 香川
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TRIならではの関係性ってことですね。
- ギル
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ここでの仕事は、スピードが大事です。たとえ初めての試作品がうまくいかなくても、トヨタが提唱する「カイゼン」の考え方のように、何度も何度も改善を繰り返すことでより良いものにつながります。ここの仕事については、ジョンから説明してもらいます。

ギルさんから案内を引き継いだのは、メカニカルショップマネージャーのジョナサン・ヤオ氏。見せてくれたのは稼働中の大型3Dプリンターだ。
- ジョナサン
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メックショップへようこそ!これは自動運転車両用のマウントを作っているところです。
- 香川
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マウントって何?
- ジョナサン
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センサーを取り付けるものですね。
- 香川
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これ今何かを探ってるの?
- ジョナサン
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ええ、制作している途中です。溶かしたプラスティックを積み上げて作っています。
- 香川
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え、じゃあこれ積み上がってくってこと?そうか、ただ撫でてるだけにしかにしか見えないな。
- ジョナサン
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とても薄い層なんです。
- 香川
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そうだよね、ほんとちょっとだもんね。ちなみに、これは具体的にどれくらいかかるの?
- ジョナサン
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この高さだと、だいたい5日くらいですね。
- 香川
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それ全部任せてていいんですか?この子に。
- ジョナサン
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プリントが始まれば何もする必要はありませんが、その前の設定や校正に時間がかかります。
みんながひとつのミッションに向けて頑張っている

ラボの中を歩く香川編集長が、机の上に置かれたスケッチに目を留めた。興味を引かれた編集長が、シニアメカニカルショップデザイナーのヴィンス・パスカル氏に質問する。
- 香川
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え、これがクルマってこと?
- ヴィンス
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これは、ドライバー・モニタリング・カメラシステムです。ハンドルのカメラで、運転手を撮影するものです。
- 香川
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それ専門なんですか?
- ヴィンス
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そうです、産業デザインをしています。
- 香川
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上で行われているロボティックスの開発とはどういうような相関があるんでしょうかね。
- ヴィンス
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すべての部門の手助けをするという場所ですので、何かパーツが必要になればここで作って渡すという感じです。
- 香川
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ここは本当に試作品を作っているいわゆる「手作業」のところなんだよね。
- ヴィンス
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そうですね。まず試作品を作り、その後たくさん試験を行ったあとで車に搭載するという流れになります。そのような作業を何度も繰り返して行って、一番良いものができ上がります。

- 香川
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今回ずっとロボティックス見てきて、初めて自動車の部品が出てきたからちょっと聞くけど、完全に自動運転になって事故をゼロにしたいっていうギルさんの意図について、どう思いますか。
- ヴィンス
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私はそれが可能だと思いますし、それに向けてみんなで頑張っています。衝突しないクルマをつくるということは可能だと思います。ここで働いてる者はみんなそれを理解して、そのミッションに向けて頑張っていると思います。そして小さなパーツ1つ1つにも、安全を念頭に置きながら作っています。人の命を救うということを第一に考えてここで働いています。
- 香川
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もうトヨタらしい、トヨタの社員らしい言葉が出て、もう帽子が物語ってるけれどもさ。すばらしい。なんかもう、社長に聞かせたいね。