トヨタのコラム
2022.07.29

夢を持たないとどうなるの?アートコンテストから見えてきたこと

2022.07.29

“冗談みたいな空想”を大切に

かつては夢の乗り物だった「空飛ぶクルマ」が現実になりつつあるように、子どもの冗談のような空想が、近い将来、あたり前になっているかもしれない。

ロケットやスマートフォンも、はじめは誰かの空想だった。世の中のすべてのものには発明者がいるのだ。だからこそトヨタは、まだないものを想像する大切さ、新しいことを考える楽しさを子どもたちに伝えようと取り組んでいる。夢が詰まった空想こそが、未来を切り拓くと信じているから。

「トヨタ夢のクルマアートコンテスト」。2004年から続く、世界最大規模の子ども向けアートコンテストだ。世界約80ヵ国の15歳以下の子どもたちから、今では毎年50万点以上の作品が集まるという。

詳細は公式サイトを見ていただくとして、今年の春、ある実験的な企画がトヨタの公式SNSで公開された。子どもが描いた夢のクルマを、プロのCGアーティストが動画に仕立て上げたのだ。

夢なら、どうかさめないで・・

このCGの元絵となったのが、災害時万能救援車。電車のように連結された5両編成のクルマで、被災地に、水、トイレ、食料から医療までを同時に届けるまさに夢のクルマである。

この絵を描いたのは、当時小学5年生だった近藤叶都(かなと)くん。実用性も考え抜かれている。タイヤの空気圧が低く、デコボコした路面やぬかるみでも、難なく走れるよう設計されているという。恐るべき小学生・・。

「車両が長すぎると運転が難しいので、5両にした。図書室でクルマの仕組みも調べて描いた」という徹底ぶり。近藤くんのお父さんも「昔から好奇心はあるほうだと思う。なんでも自分で調べる」と話す。

昨年、入賞の知らせを聞いた際は「夢ならさめないで」と思ったそうだ。いちばん嬉しかったのは、家族にお祝いのごちそうに連れて行ってもらったこと。一方で苦しみも。公式発表されるまでは、入賞したことを親友にも秘密にしなければならず「みんなに伝えたくて必死に我慢した」と当時を振り返る。

そして今回のCG化。「受賞だけでもすごいのに、嬉しいよりもびっくりした。想像を超えてすごかった」と笑顔の近藤くん。

実はこの記事のためのリモート取材、絵を描いた近藤くんと、CGアーティストを同時にマッチング。お互いの作品は知っていたが、顔を見ることは初めて。話すことも初めての場となった。そこで話された会話とは・・

小学生と高校生の、決定的な違い

近藤くんの絵をCG化したのが、現役高校生CGアーティストYumaさんだ。さっそく近藤くんから質問が投げかけられた。

絵は立体ではなく平面図なのに、どのように横側や裏側など見えない部分を形にできたのか。自身の絵が、リアルすぎる動画になったことに興味が尽きない。

一方のYumaさん。近藤くんの絵を初めて見て、「自分では考えられない、小学生ならではの柔軟な発想」と感心したそうだ。

二人とも同じ10代である。しかし、小学生と高校生の間では、アイデアを形にする際に決定的な違いがあるようだ。大人に近づくにつれ、知らず知らず現実的なことを意識してしまうという。

とはいえYumaさんもまだ高校生。プロのCGアーティストになった経緯もデジタルネイティブ世代ならではだ。コロナで学校が休校中、暇だしおもしろそうだな、とYouTubeのハウツー動画で覚えたCG作品をSNSにアップ。またたく間に人気CGアーティストに。

最近、嬉しかったことがあったという。「Yumaさんの映像を見て、自分も映像の学校に行くことにした」と、SNSのダイレクトメッセージが届いたそうだ。頭の中の想像力をカタチにすることで、誰かがさらに夢を見るという好循環が生まれていた。

そして、もう1つ動画を見ていただきたい。別の入賞作品をCG化したものだ。

カメレオンがクルマに乗っている理由

こちらは1215歳部門の入賞作。人間が破壊してしまった美しい自然を取り戻すクルマだという。

汚れた空気をエネルギーとして吸い込み、排出するのはきれいな空気。走りながら種をまき、不毛な大地を緑に包んでくれる夢のクルマ。

廃車後、土に植えると大きな木に成長するという究極のエコカーなのだが、驚きは絵の表現手法だ。画像では分かりづらいが、実は、小さく切った紙を貼り合わせた“ちぎり絵”。しかも、環境配慮で古紙を利用。子どもとは思えない一貫したコンセプトでつくられている。

絵が好きで、これまでも美術館でたくさんの作品を見てきたという。「有名画家の人生はすごいものが多く、絵にしっかりと人生観が表現されている」と教えてくれた。

この話を聞いて、取材中のいくつかの言葉が気になった。「生きものが大好きなので、自然に関する絵にしたかった」「ペットで飼っているカメレオンは必ず描こうと思っていた」。そう。憧れの画家たちと同様に、自身の作品にもしっかりと人生観が詰め込まれているのだ。

受賞後、おばあちゃんから「嬉しくて涙が出る」と言ってもらったそうだが、きっとカメレオンも、想いを込めて描いてもらったことを喜んでくれているだろう。

夢を描くことは、幸せを思い描くこと

そして今回のCG化された映像を見て、「自分の作品が何百倍もカッコよくなっている!」と驚いたそうだ。担当したCGアーティストは今年から拠点をルーマニアに移し、グローバルで活躍する田崎陽太さん。

子どもの絵をCG化するという珍しい体験を通じて、原作者に伝えたい想いがあったという。「つくり手として童心に戻る機会が少なくなっていたので、本当にいい刺激をもらえた」「子供の自由さに負けないようにがんばった」と話す。

アイデアの良し悪しには、年齢も経歴も関係ない。数々の実績を残してきた田崎さんでさえ、「今でもはじめて作品を公開するときは、不安もある」と明かしてくれた。世の中にない、まったく新しいアイデアを発信するのだから当然かもしれない。

0から1の新しいものをつくり出すのは大変だ。クルマだって高速走行中より、動き出すときのほうが大きなエネルギーが必要なのと同じである。

でも、すこしでも楽しい未来を想い、何かを生み出そうと懸命に頭を巡らせる。夢を描くという行為は、そんな人間らしい幸せを願う行為なのだ。

たくさんの受賞作を改めて見直すと、それらは「世の中を今より楽しくするための、子どもから大人への提案」にも感じられる。自分の想像力は、自分にしかない強みである。その強みを発揮できる人がもっと増えていくように。そして、未来がどんどんおもしろくなっていくように。

今年の募集案内も発表されたトヨタ夢のクルマアートコンテスト。今日も、誰かの頭の中から、世の中になかった新しい希望が生まれていく。

トヨタ本社、社長や役員の執務室がある廊下にワールドコンテストの過去受賞作が大事に飾られていた

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