「FRの魅力をチャレンジングな手法で伝えたい」 豊田社長の想いに応えたCMの舞台裏

2022.04.26

15日からオンエアされているGR86の新CM。驚くべきことに、CGは一切使っていない。息ピッタリの"4台"の競演に注目!

THE FR」というアルファベット5文字のキャッチコピーと車名4文字だけ…。そんな合計9文字だけが画面に表れるCMの放映がはじまった。


30秒間、3台の(3代の)86が連なって、ひたすらサーキットを走っている。景色からして富士スピードウェイの最終コーナー…。それもコースを逆走しての撮影だ。

3台の息はピッタリ、コーナーで綺麗にクルマの向きを変え、後輪を滑らせていく。

FRとは「フロントにエンジンを搭載した後輪駆動のクルマ」を意味する2文字であり、後輪を滑らせる走行方法は“ドリフト”と言われ、“FRならではのクルマの挙動”である。

2012年2代目(TOYOTA 86)が発表された際、豊田章男社長はFRについて語っていた。

トヨタのスポーツカーはFRの歴史だったと思います。ブレーキとアクセルで、いかに安全にカーブを曲がっていくか……。そんなクルマの楽しみ方を、86をベースに体験できれば、運転というものがより安全で快適なものになっていくのではないでしょうか…。

その系譜を継ぐクルマの3代目(GR 86)につけられたキャッチコピーが「THE FR」であり、このクルマを表すのは“その言葉だけ”で良かったいうことである。

映像はドローンで撮られている。背後から追いかけるドローンは、コーナーで減速する3台に追いつく。そこで驚くべきことが起きる。

真ん中を走る2代目の助手席窓にドローンが飛び込む。そのままドライバーの目の前をかすめ飛び、反対側の運転席から出ていく。ドローンは飛行を続け、撮影は継続されていく…。

そのまま3台を追い続け、今度は先頭を走るGR 86のウィンドウに飛び込む。GR 86を通り抜けたドローンは、そのまま空中でGR 86を映し続ける。その映像に「THE FR」「GR 86」の文字が重なりCM映像は終わっていく。

この映像はどうやって撮影されたのか? その舞台裏を映した映像も同時に公開された。

舞台裏映像の冒頭に出てくるのは、この無謀にも思える映像を企画したクリエイティブディレクターの野添剛士氏。CM企画の発端が「モリゾウとの会話」だったとそこで明かしている。

この企画は「FRの魅力をこれまでにないチャレンジングな手法で伝えていこう」というモリゾウさんとの会話で生まれました。

CMの30秒を見れば、いかに“チャレンジング”だったかは想像ができるが、実際のところ、どんな“チャレンジ”があったのか?トヨタイムズは野添氏に聞いてみた。

チャレンジングな撮影に挑戦してほしいと豊田社長に背中を押していただいた感じです。それに応えるため、CGなどのデジタル編集技術にいっさい頼らず、すべてをリアルに実施し、アナログ的に撮影することにこだわりました。

レーシングドライバーとドローンパイロットによる「“ドリフトを操る”と“ドローンを操る”の競演」に向け3カ月にわたる準備を重ね、本番でも数え切れないテイク数を要すことになりました。

撮影は3日間、連日長時間にわたりました。ドライバーは集中力を維持することも大変でしょうし、何十回もテイクを重ねると、スタッフも体力を削られ、現場の雰囲気はみるみる悪くなっていくものです。

しかし、佐々木選手の耐久レース仕込みのムードメイキングで、何度も一体感を持ち直していただきました。そのおかげで大変な撮影を乗り切れました。

佐々木選手の集中力と体力、そして“こだわり”は、本当にすごく、それが全員の気持ちを高めてくれていました!

ここで名前の挙がった佐々木選手とは「佐々木雅弘」である。GR 86の開発ドライバーであり、このCMでは先頭を走るGR86を操っている。トヨタイムズでは「水素エンジンカローラのドライバー」、そして「モリゾウの運転をもっと上手くする男」としてお馴染みの“佐々木選手”である。

ドローンが窓に飛び込むシーンの難易度についても野添氏に聞いてみた。

ドローンパイロットに聞くと、窓への飛び込みの難しさは「数十メートル先にある1センチくらいの的に目掛けて、クルマとドローンの呼吸をあわせながら飛び込ませる感覚」らしいです。センチ単位の距離のズレも、コンマ単位のタイミングのズレも許されません。

撮影の時、なかなかタイミングが合わず、クルマ側の速度を落とそうか?という提案がありました。しかし、「ドリフトそのものがカッコいいこともFRを魅力的にみせる上で同じくらい大事だから、このままの速度でなんとか実現させようよ」との声が出てきました。

全員がこだわってくれたおかげで、あの“飛び込み”が実現したと思います。こんなリアルへの、あくなきこだわりが、あの“迫力”につながったと思っています。

裏側映像の冒頭で、野添氏は、撮影したのは単に“走るクルマ”ではなく“その迫力”だったと話している。実際に、プロたちのこだわりによって、今までにない“迫力”の映像が完成し、その“迫力”が、GR 86の持つ “FRの魅力”を、限られた秒数の中に凝縮して詰め込んでいる。

そして、舞台裏映像の方には、30CMでは盛り込めていない“もう一つ大切な要素”があった。それは「“動くものを乗りこなす”ことが“いかに楽しいか”」ということである。

困難に挑んだ“操縦士”たちは、とても大変そうであるが、誰もがメチャクチャ楽しそうな顔をしている。舞台裏から、それが強烈に伝わってきた。CMを見た方は、5分半の舞台裏を、ぜひあわせてご覧いただきたい。

GR86 CM撮影の舞台裏 撮影スタッフインタビュー
GR86 CM撮影の舞台裏 ドライバーインタビュー

【追伸:トヨタイムズからのおすすめ】

これらの映像を見る際はイヤホンでの視聴をおすすめしたい。全編に流れる「インドネシアの民族音楽“ケチャ”」に「車内で採音された太めのエンジン音」や「タイヤのスキール音」が絶妙にマッチしている。それが妙に心地よい。それを楽しむには、イヤホンがおすすめである。

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