トヨタイムズニュース
2023.01.26

豊田章男社長がトップ交代 後任・佐藤執行役員(53)に託した想い

2023.01.26

2023年1月26日、トヨタは佐藤恒治執行役員が次期社長に就く人事を発表した。13年間トップを務めた豊田章男社長は会長へ。トヨタイムズの緊急生放送で語られた新旧社長メッセージを速報する。

「トヨタの『思想』『技』『所作』を身につけようとクルマづくりの『現場』で必死に努力してきた人だから。トヨタのトップに就く人は、その体現者であってほしい――」

2023年126日、豊田章男社長がトヨタイムズニュースの緊急生放送に出演し、14年ぶりとなるトップの交代を発表した。

内山田竹志会長の退任を機に、豊田社長が会長に就任。社長のバトンはLexus International Co. および GAZOO Racing Companyのプレジデントを務める佐藤恒治執行役員へ手渡される。

トヨタイムズの緊急生放送で語られた新旧社長のメッセージを速報する。

豊田社長あいさつ

トヨタイムズニュースをご覧の皆様、こんにちは。豊田でございます。

本日の臨時取締役会で本年4月より、会長の内山田竹志が退任し、新会長に私、豊田章男が、新社長に佐藤恒治が就任することを決定いたしました。

その内容をステークホルダーの皆様にできるだけ早く、正しくお伝えするために急遽こうした場を設定いたしました。

最初に、今回の決定の背景にある私の想いをお話しさせていただきます。

トリガーとなりましたのは、内山田会長が退任されることです。トヨタの変革をさらに進めるためには、私が会長となり、新社長をサポートする形が一番よいと考え、今回の決断にいたりました。

内山田会長は、常に、陰になり、日向になって、私をサポートしてくださいました。この場をお借りして、改めて感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

私が社長に就任いたしましたのは、リーマンショックによる赤字転落の直後のことでした。 その後も、世界規模でのリコール問題、東日本大震災など会社存亡の危機の連続でした。

この13年間を振り返りますと、とにかく必死に、一日一日を生き抜いてきました。それが私の正直な気持ちです。

危機に陥ったとき、目の前には、2つの道があらわれると思います。短期的な成功や一発逆転をねらう道と自分たちに強さをもたらした本質・思想に立ち戻る道です。

私が選んだのは後者でした。トヨタの思想、すなわち、「もっといいクルマ」をつくり、世界の各地域のステークホルダーに愛され、必要とされる「町いちばん」の会社を目指す道です。言いかえれば、商品と地域を軸にした経営ということになります。

これは、成果が出るには時間がかかり、短期志向の人たちには理解も、評価もされないイバラの道です。

やはり、時間はかかりました。それでも、グローバルトヨタ37万人が、それぞれの町のそれぞれの現場で、もっといいクルマづくりに取り組んできた結果、商品が大きく変わりました。

クラウンやカローラといったロングセラーが息を吹き返し、86やスープラといったスポーツカーも復活しました。働くクルマ、商用車も大切にしています。

TNGAとカンパニー制と地域制。この3つが相まって世の中が必要とするどんなジャンルのクルマでもそれを一番に考える人が会社にはいる。そんな現場をトヨタの中につくることができたと思っております。

そして、2020年には、継承すべきトヨタの思想を明文化したトヨタフィロソフィーをまとめました。次世代の経営トップが道に迷ったときに立ち戻れる場所になればと思っております。

この13年間で、バトンタッチのための土台はつくれた。私は、そう思っております。

次に、佐藤を新社長に任命した理由を述べたいと思います。ひとつは、トヨタの「思想」「技」「所作」を身につけようと、クルマづくりの現場で必死に努力してきた人だからです。トヨタのトップにつく人は、その体現者であってほしいと思っております。

そして、もうひとつは、クルマが大好きだからです。レクサスのディーラー大会で、何を伝えればよいか、彼が悩んでいたことがありました。

私がアドバイスしたことは、「私の真似ではなく、個性を大切にしてほしい…」。それだけです。

そのときに彼は、こう言いました。「モリゾウさんがクルマの運転が大好きなら、私は、運転する人を笑顔にするクルマをつくるのが大好きです」。

自分の会社の商品を「大好きだ」と言える。これは、本当に大切なことだと思います。佐藤新社長であれば、商品を軸にした経営をさらに前に進めてくれると信じております。

さらに付け加えるとすれば「若さ」です。「正解がわからない時代」に変革を進めていくには、トップみずからが現場に立ち続けることが必要になります。

それには、「体力」と「気力」と「情熱」が欠かせません。若いということは、それだけで大きな魅力だと思います。

佐藤新社長には、ひとりで経営しようと思わずに、チームで経営してほしいと伝えました。

この13年間、私が育ててきた人財は彼だけではありません。多様な個性を持った多くの仲間を育ててきたと思っております。

未来をつくるためには、イノベーションが不可欠です。私は、イノベーションは、多様な個性が、同じ目的に向かったときに生まれると思っております。

佐藤新社長は、私自身の役割の中で言えば、トヨタの社長というよりは、「マスタードライバー」「モリゾウ」にせまり、トヨタ、レクサスの味をきわめたい。もっといいクルマをつくりたい。マスタードライバーの笑顔、モリゾウの笑顔を得たい。その一心でやってきたと思います。

私自身は、どこまでいっても「クルマ屋」です。クルマ屋だからこそ、トヨタの変革を進めることができたと思います。

しかし、「クルマ屋を超えられない」。それが私の限界でもあると思います。

佐藤新社長を軸とする新チームのミッションは、トヨタをモビリティ・カンパニーにフルモデルチェンジすることです。

佐藤も私と同じ「クルマ屋」だと思います。彼は、私が社長を引き受けたときと同じ年齢になりました。彼には若さがあります。そして、仲間がいます。私には、できないことでも、新チームなら、できると思います。

次世代がつくる未来。私は、それにかけてみたい。これからのトヨタにご期待ください。ありがとうございました。

佐藤次期社長 冒頭あいさつ

ご紹介いただきました佐藤恒治です。豊田章男社長の「想い」を受け継ぐという大役を拝命し、身の引き締まる思いです。

新社長就任の内示をいただいたとき、豊田社長からは、「自分らしくやりなさい」という言葉をかけていただきました。今、新しい経営チームの中で、「自分らしく、役割を果たそう」と考えています。

「自分らしく」ということで申し上げますと、私は、エンジニアで、長くクルマ創りに携わってまいりました。クルマを創ることが大好きです。だからこそ、「クルマを創り続ける社長」でありたいと思っています。

トヨタのあり方を「クルマ」という形で示していきたい。そう思っています。

操る楽しさを追求したクルマや移動を支えるクルマ。そして、これからのクルマは、「モビリティ」へと大きく進化してまいります。

その中で、クルマの本質的な価値を守り、新しいモビリティの形を提案していきたいと思っています。

新チームでは「継承と進化」をテーマに、創業の理念を大切にしながら、「商品と地域を軸にした経営」を実践し、モビリティ・カンパニーへのフルモデルチェンジに取り組んでまいります。どうぞよろしくお願いいたします。

佐藤次期社長 クロージングあいさつ

最後に、私の決意を申し上げたいと思います。

豊田社長からもありましたとおり、新チームのミッションは、「モビリティ・カンパニー」への変革です。その根底にあるのは「すべての人に、移動の自由を」という願いです。

これからのクルマは、モビリティとして、インフラをはじめとする社会システムの一部になっていきます。

こうした変化の中で「これからもクルマが存在してほしい」。世の中の皆様からそう言っていただけるようクルマを進化させ続けていくこと。それが、私たちの仕事です。

「もっといいクルマづくり」「町いちばんのクルマ屋」。この13年間で浸透したトヨタが大切にすべき価値観があるからこそ、新チームがやるべきは、「実践」の量とスピードを上げていくことです。

電動化を加速することや、地域のニーズに寄り添って多様な価値観にお応えするクルマづくりなど、具体的な行動で、商品で、示し続けたいと思います。

「クルマ屋にしかつくれないモビリティの未来」に一歩でも近づけるよう、ガムシャラに取り組んでまいります。

皆様のご指導、ご支援を賜りますようよろしくお願いいたします。本日はありがとうございました。

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