2019.01.10 「イチローさん」

「失敗とどう向き合うかが大切だ。失敗の原因を第三者に向けるのではなく、自分に何が足りなかったかを問うべきだ。だから、僕はバットやグラブの手入れを怠らない。失敗の原因を道具ではなく、自分自身に向けるために」。

2014年の冬。
私がイチロー選手と初めてお会いした時の言葉です。

その少しあと、イチロー選手からプレゼントが届きました。
イチロー選手がトレーニングで使用した練習用のバットでした。
ボールの跡やすべり止めの松脂がついたままになっています。

「試合用」ではなく、「練習用」というのが、
「イチロー選手らしいな」と思いました。
イチロー選手の数々の挑戦と失敗を見届け、支えてきたバット。
このバットには「失敗の責任を自分に向ける」という
イチロー選手のメッセージが込められていると思いました。

いただいたバットを手に取りながら、
私は米国の公聴会のことを思い出しました。
公聴会に向かう時、心に誓ったことがあります。

「大好きなトヨタを何としても守りたい。そのためには、絶対に他人のせいにはしない。
過去、現在、未来、すべての責任を私がとろう」。

そう覚悟を決めてのぞんだ、私にとっては命がけのバッターボックスでした。
東京モーターショーで、イチロー選手はこう言ってくれました。
「僕(イチロー)とトヨタは似ている」。

私もそう思います。
イチロー選手と話していると、私が思っていることを
彼がいつの間にか解説してくれていることに気付かされます。

そんなイチロー選手が、
メジャー通算3000本安打という偉大な記録を達成されました。

「記録達成の瞬間。あんなにチームメイトたちが喜んでくれて、ファンの人たちが喜んでくれた。
僕にとって3000という数字よりも、僕が何かをすることで、僕以外の人たちが喜んでくれることが、
今の僕にとって何より大事なことだと再認識した瞬間でした」。

彼のコメントを聞いて、彼の涙を見て、
また、公聴会の時のことを思い出しました。
公聴会が終わった後、
応援に駆け付けてくださった
ディーラーや工場の方々との面会の場。

「自分は一人ではなかった。トヨタを、みんなを守ろうと思って戦っていたつもりが、実は自分の方が支えられ、守られていた」。

そう実感した時、思わず涙がこぼれました。

イチロー選手の涙も、そんな涙なのかな?
だとしたら、やっぱり似ている気がします(笑)

イチローさん、3000本安打達成、おめでとうございます!

以上

※こちらの内容は、社内イントラネットに2016年8月9日に掲載されたものです。