トヨタイムズ

「夢のある人」が未来をつくっていく

香川編集長 2020.08.30 UPDATE

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トヨタが「月面を走るクルマ」をつくっている、と聞いて本気にする人がどのくらいいるだろうか。だが有人与圧ローバは夢物語ではない。2029年という「すぐ先の未来」に打ち上げることを目指し、トヨタやJAXAのメンバーをはじめとして、多くの人が真剣に取り組んでいる。そんな姿を取材した編集長は何を感じたのだろうか。

ここまでつながっているとは思わなかった

ルナクルーザー(模型)
Q.  JAXAでの取材の感想をお聞かせください

香川
遠いことなのかなって最初思って。遠い将来、そういうことも起こってるだろうかなということで、もちろん我々は50年前に月面に降り立っているキャリアはあるにしても、具体的なものとして、ここまで真剣に近い将来のものとして動いているという予想はしてなかったですね。僕としては。

地球でことを解決しなければならない。いろいろな問題が今起こっている、環境問題も起こっている中で、「月は後回しでいいだろう」というのが普通の発想だと思うんですよ。

ところが「先に月でやっておく」ことで、後々地球にフィードバックしていくというのが、ここは見落としていたので、僕は。「月は放っておいて、まず地球でしょ」って普通は考えると思うんですけどね。

ガーディアンという「半分自動、半分手動」で、どこまで行くのかというのは、そこから自動運転は始まっていくとしても、じゃあ「これが実用化したら社会でどう走るのか」とか「歩行者との関係はどうなのか」とか、「どう折り合っていくのかがつながっていない」という意見を持つことはできたと思うんですよ。

一方で、燃料の問題もそうですし、あるいはAIの機能を搭載して、これは自動運転につながっていくんだけど。これは、シリコンバレーで見たときにすごく遠い将来だと僕は思ったので。ハンドルを握って自分で運転してなんぼの「移動の手段」としてまだまだクルマを見ている人たちが多い中で、僕自身もそうですし、これを全部ひとつに虎視眈々(たんたん)と下でつなげようとしていたトヨタという会社の強みっていうのは、だんだんと明らかになっていって。

前回、首都高で自動運転に乗ったのもそうですし、水素カーのMIRAI(ミライ)に乗ったのもそうですし。そして、ウーブン・シティ(Woven City)からの発表、「こういうことを考えている」と豊田社長が言われたことから、この「月面」というのは色濃くつながってますから。

月面で耐えられる環境、つくれる環境、快適な環境、それこそがウーブン・シティで、地球に持って帰ってここでもできるでしょ、と。もうクルマはそういうような、だたのe-Paletteではなくて、本当にそういう環境を提示する1つのスペースであると。それが、しかもモビリティとなっているんだ、というような一本道がおぼろげに見えていると。ここまでつながってると思わなかったですかね、うん。

「夢に向かっていく」ことを許される環境がある

香川照之編集長
Q.  クルマからローバ(有人月面探査車)まで開発するトヨタに対して思うことはありますか?

香川
夢というのは10代、20代に見るもので、40代、50代、60代にいくに従って夢はもう見なくなるものです、という定義があるとするならば、それに対して真っこうから棹(さお)さしている会社の体系なんだな、と改めて思いましたね。

何歳であろうが、若かろうが、経験があるお年を召された方だろうが、夢に向かっていける課題が次々あって、それを社長以下「自由にやっていいぞ」という場を与えられ、それの挑戦する時間も、お金も、もちろん与えられていって。そこに対して、人の程度の差はあると思うんですが、「夢に対して向かっていく」ということをまず許されている環境、そしてそれをやろうとしている人材が後を絶たず出てきてること。この豊かさっていうのは、やっぱり、ちょっと突出してるんじゃないでしょうかね。

2020年というこの環境問題が続出してる中では、こういうような人たちが求められて、こういうような人が後世にいろんなものをつないでいく、そういう時代になったんだなと。

そして、そういう環境が許されている会社に所属している人は、そういうような素質があって、夢に向かって行ってる、何歳であっても。その姿を見てるとこちらも勇気が持てますし、取材するかいがあるなと思うし。逆にいえば、本当に人がつくれないんだろうね。だから、この会社が「人づくり」だということが突出するんだろうと思うんだけど、トヨタさんが。

多くの会社では、やっぱり人がつくれなくて、何か技術的なことはつくるんだろうけど、人がつくれないと。その人がいなくなると、もう次がいないとか。やっぱり、人をつくることが難しい。その逆説として、「人づくりです」と全員がおっしゃる。そのことは判を押してそうだからね。

トヨタ工業学園のあの子たちも「仲間です!」って即答する。「何が強みだ、君たちの?」「仲間です!」「人です!」っていう。

もちろん、技術うんぬんいろいろあるんだろうけど、そこには人の何かに対して挑戦して乗り越えるんだと、人のために生きてやるんだとか、何かのために生きてやるんだっていう精神だと思うんですよね。「僕が幸せになりたい」とか「僕に何をやってくれるの、君は?」とか「僕が得をするかな?」っていう人は、ほとんどいないわけですよ。

やっぱり、人に与えること。もらうんじゃなくて与えるということを喜びとする。そういう人たちがどんどんつながっていく、その幹の太さは、僕は取材してて、ずっと感じますよね。

若田さんなんかは本当にそうでしたけど、相当つらいことを経験されて。半年も無重力でね、いわば「外出自粛」をずっと続けてきた人なわけですよ、無重力で。その方が「こうやって寝るのが楽しくてしょうがない」っていう、ちょっと「えー!?」っていうようなことを嬉々として少年の目のように輝かせておっしゃってるのを見ると、「あー、やっぱりこうして未来がつくられていく、そこに多くの人たちが乗っかって幸せがあるんだな」と。

やっぱり、人がつくっていくんだなというのを改めて感じましたね。「夢のある人」が何かをつくっていくんですね、きっと。

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