トヨタイムズ

未来のために、今できること。豊田社長緊急テレビ電話インタビュー

未来のために、今できること。豊田社長緊急テレビ電話インタビュー

香川編集長 2020.04.15 UPDATE

INDEX

新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、日本自動車工業会(自工会)の会長として記者会見に臨んだ豊田社長。この会見は、自工会に加え、日本自動車部品工業会、日本自動車車体工業会、日本自動車機械器具工業会という自動車製造に関わる4団体の合同会見という形で開催された。

会見で豊田社長が語ったのは「この危機を乗り越えるために自動車業界全体として何ができるのか」ということ。自動車業界全体が結束して乗り越えていくという強いメッセージだった。

会見を終えた豊田社長を、香川編集長が緊急インタビュー。世界中が危機に直面している現在、豊田社長はどんなことを考えているのか。編集長がリモートで取材した。

香川

ついたの?あ、つきましたね。次!ついにスイッチまで私がいじらないといけないという…。1カメさんOK?2カメさん、3カメさん、4カメさん、自撮りのOsmoもオッケー!

トヨタイムズ編集長、香川照之です。今日はですね、自工会の会長でもある豊田社長が、ネット会見をするということなので、私もこのモニター越しに取材をしてみたいと思います。

そして見てください!窓全開でございますね。360度ここから回しますよ。誰もいない。僕だけですよ。編集長として、どういう状況になっても、やはりこのトヨタという会社がどういうスタンスでいるのかを追い求めていく、と。今日もひとつよろしくお願いします。

そろそろ会見が始まるようです。あ、老眼鏡を持ってくるの忘れたよ…。老眼鏡、届きました、今。あ、始まる。

少しでも役に立てることを〜自工会での会見

4月10日自工会会見

医療従事者など戦う人への感謝/医療崩壊させないために

豊田でございます。今日は、自工会だけではなく、自動車製造に関わる3団体の皆様とともに、お話しをさせていただきたいと思います。

まずは、医療従事者の方々や、輸送関係の動き続けてくださっている方々、それを支えるご家族の皆様に感謝申し上げたいと思います。本日の内容には、これから考えていくことなど、我々の思いや宣言のようなものが含まれております。具体的に決まっていなくても、思いをお話しすることで、「それなら一緒にやってみよう」と手を挙げてくださる方が出てくるかもしれません。

マスクの自給自足/医療サポート
人工呼吸機製造の改善支援

少しでも役に立てること、その一つ目は、われわれ自動車産業の手でマスクを作ることです。しかしこれはまだ、皆様にお届けするほどの品質も数量も確保できておりません。まずこれらは、自分たちの身を守るために使ってまいります。その分、外からの購入を減らし、需給の緩和に寄与できればと考えております。

空いている寮や保養施設がございます。軽症患者が療養する施設として使っていただくことも考えてまいりたいと思います。

人工呼吸器の製造を期待する声があることも認識しています。しかしこれは、人の命に直結する医療器具です。自動車も人命に関わる製品ですので、命に関わるモノづくりが、どれだけ難しいかを我々は理解しています。簡単なことではありません。まずは、その生産を一つでも増やせるような、我々のノウハウが活かせるサポートを始めてまいります。

また、人命に直結しないものでも「患者さんの移送に必要な車両の提供」や「それに適した車にするための改造」または「病室用ベッドの部品などの製作」に取り組んでまいります。

モノづくりを失わないための試み

車が売れない日々が続き、経営が立ち行かなくなる仲間も出てくるでしょう。しかし、その中にも絶対に失ってはいけない要素技術や、どんな機械にも真似できない技能を持った人材が存在しています。何としても雇用を守るファンドを考えていければと思っております。

こういうファンドをもってお互い助けあう、また人材のマッチングも会社単位でなく、業界単位で、この人員が維持できないかなという想いもございます。

今、ボクシングで言えば、ちょうどそのクリンチしてる状態だと思うんです。

ただただ攻撃を受けて。今は外に出られない。その中で多くの人は、移動することのうれしさを再発見しているのではないでしょうか。コロナウイルスが終息したとき、経済をいち早く復活させる、一番の原動力になっていきたいと思っております。

<豊田社長の会見終了>
会見の中継映像(全編)はINSIDE TOYOTA #67をご覧ください。

香川

今、会見が終わりました。大変に厳しい内容であるということは、皆さんの顔色からも分かりますし。私自身、トヨタイムズ編集長としての立場以上に、個人としても感じざるをえないような1時間を会見を見させていただきました。また、この後社長と話がつながるということですので。こんなに紙がジャカジャカ、質問をですね、書きまくったわけですよ。ちょっと社長に質問してきたいと思います。

今は耐えながら次の一手を考える

香川

では、社長とつながっているようなので、早速、会見後でございますが、テレワークならぬ、テレ取材をこれから始めてみたいと思います。

豊田

はい。どうも、こんにちは。

香川

こんにちは。大変にお疲れ様でございました。本当にお疲れのところなんですが、早速、僕からも何点か質問させていただきたいと思うんですけれども。まず、本日、トヨタの社長としてではなく、自工会の会長として会見をされました。この意義はどこにあるのでしょうか?

豊田

不安なんですよね、自動車業界も、世の中の人も。それで、誰かのせいにできるかというと、それもできないんですよ。だから、今、何が起こっているかというのを真剣には考えなきゃいけないですが、それぞれが勝手な想像ゲームをして、深刻な状況になることを避けたい。香川さんのお好きなボクシングね、ボクシングでいうと…。

香川

今日、例えられてました。

豊田

今、クリンチ状態です。バンバン、バンバン叩かれていて、叩かれているときにどうするかというと、たぶん、致命傷を打たれると終わりなんですよ。

香川

そうなんですよね。手を出すとカウンターを食らうわけですよ。

豊田

致命傷にならないというのは、じゃあ何を守るかというと、日本にはものづくりの基盤があるんです。技術・技能を習得した人たちがいます。それが崩れるってことが致命傷じゃないかな、と。だから、とにかく耐える。いつまで続くか分からないけど、耐える。それで、耐えながらも相手を冷静に見る。体力を温存しつつ、次の攻撃のための一手を考えるときだと思うんですよ。

香川

なるほど、「休むラウンド」というやつですね、これがね。

豊田

それで、そのときに、さあ、今だっていうときに、自動車が一番のけん引役になりたいなと思っています。ところがトヨタという会社が一社だけでけん引役ができるかというと、それはできなくて。

今日やった仲間たち、要は、部品工業会とか、車体工業会とか、販売店の整備の器具をつくってるグループだとか、そういうグループと心を一つにやらない限り、これは、けん引役にもなれなければ、深刻な状況にいっちゃうんじゃないか。

コロナはいつかは、いつか人は打ち勝ちます。いつかは、こちらが攻撃にいくわけですから、そのときに備えて、今こそやるべきことをやる。それをやるために「ぜひ皆さん、一緒にやりましょうよ」と。「Woven City(ウーブン・シティ)」とはまた違う「この指止まれ!」が、今日行われたんじゃないのかなと思っています。

香川

なるほど。分かりました。今こういう状況になりまして、当初はある経済理論者などは、「経済を死なせてまで人間の命の方を守ることほどの問題なのか、この病気は」と言った人もいます、極端な意見。「経営の死」と「人類の死」というもののせめぎ合いが、このまま続いていくと思うんですよ。ここに対してどういうバランス感覚を持っていくべきか、あるいは、どういうふうに思われているのか、この二つの天秤の。

豊田

偉そうなことは言えませんが、天秤にかけること自体がナンセンスです。両方必要なんですから。

香川

なるほど。

豊田

経済を成り立たせるためには人の命が必要。それで、経済が成り立つとしても、人の命を犠牲にしているような経済は、役に立ちませんよということです。

香川

なるほど。

豊田

だから、これはどっちをとるかじゃなくて、両方、クルマでいう両輪かのごとく必要なものであるので。どっちが先で、どっちが後だとかいうことじゃなくて、両方同時に生き続けることが必要なんじゃないですかね。だから「死ぬのを防止しましょう」と言っています。

今必要なのは、一人の人間として自分ができることをやり、自分ができないことをやってくれている人には感謝し、みんなが助け合い、みんながありがとうと言い合いながら生き続けることじゃないのかなと思うんですよね。


いいことをやってたら、ありがとうと言いなさいよって。

香川

そうですね。これは本当にいい言葉。

豊田

自分が何かやれるもの、自動車会社だから自動車だけ作ってるわけじゃなくて、戦時中は鍋、釜も作った。

香川

おっしゃってました。

豊田

われわれの先代は。だから、どんな仕事であれやるんだという覚悟ですよ。

人を「コスト」と見るか「カイゼンの源」と見るか

香川

なるほど。一方で、実際に何千人の社員が一瞬にして雇用を解雇されたりとか、そういう企業もあるわけじゃないですか。こういう企業に対して、トヨタとして、あるいは自工会の会長として、どういうような手を差し伸べる形というか、そういうのが、どういう形であるんでしょうか。実際に今、瀕死の状態に際している中小の企業の人たちとかもいると思うんですけれども。

豊田

人材というものをどう考えるかなんですよね。よくいろんな企業では、人というのをコストと見る人がいます。でも、トヨタは少なくともコストと見るのは嫌だとトップは言ってるということです。人は人の財産であるように、トヨタでいうと、知恵を生み出す「カイゼン」源なんですよ。

香川

知恵を生み出す「カイゼン」。

豊田

人とというのは。よくこういうふうになって、先が見通せないというと、一律、何割カットとか、そういうことを言いだすんですよ。当面の需給がないんだから、はい、工場をクローズして、働いている人は辞めてください。トヨタの場合は絶対、そういう会社になりたくない。

リーマンショックのときも、アメリカで従業員に一切手を付けなかったのがトヨタです。それは人というものをどう見てるかですよ。コストと見てるのか、「カイゼン」の源と見てるのか、

われわれはカイゼンの源と見てるし、人生において、トヨタという働き場を選んでくれた人たちには、そこで仕事をすることによって、財産となるような教育をしていきたいという思いがあります。

だから、こういうときに、コロナはいつか終わるんです。終わったときに、以前1時間で10個できていたなら、このクルマができない時代に、1時間で12個できるような「カイゼン」をしていこうよと。そうすると、何カ月か止まっても、今までの延長線上で行くよりも、いつかキャッチアップして、追い抜くことだってできるんですよ。だから、こういうときに何するかなんです。

香川

そうですね。先ほどボクシングに社長、例えられたじゃないですか。ボクシングって耐えてるラウンドに何をしているかが次のラウンドに生きることがいっぱいあるんですよね。細かくそこで、例えば、ボディを突いてたりとか、一生懸命、相手のパンチのコンビネーションのパターンを読んでたりとか、そういうところをやってるかやってないかは確実に出るので、とてもいい例えをされたなって僕もそこはかなり感銘を受けましたよ。

しかも足を使えないわけですよ、今は移動ができないから。コーナーでうずくまってるしかないわけなので、より状況としては厳しいですよ。だからこそ、社長が一番最後に会見でおっしゃられた、「いつかまた移動できる喜びをわれわれが分かち合うことができるために頑張ろう」という言葉がすごく胸に刺さって、感動だもん。

クルマは気持ちを運ぶ乗りものなんだ

豊田

私は東日本大震災の後、3月26日に初めて高速道路がオープンになって、東北の道へ行きました。アルファード1台で。そのときのルールは、食物は持っていく、ごみは捨てない。そして地域の人に迷惑を掛けない。

そのときに高速道路を走っていく道が、いろんな他府県ナンバーだったんですよ。それで、そのクルマの中にはいっぱい段ボールが積み込んでありました。

香川

水とかね。

豊田

だから、物資も運んでるんですけど、心配していた家族とか、東北地方の人たちに「心」を運んでいるんだろうな、というのをものすごく実感しました。あのときほどクルマが、気持ちを運んでいる乗りものなんだ、というのを感じたことはありませんし、それはずっと生涯忘れないようにしていこうと思ってるんですよ。

香川

なるほど。

豊田

だから、そういうものが自分の仕事としてやれ、人々に感動を与えれるようなモビリティであれば、こんないいことはないんだから、死んじゃ駄目なんですよ。

香川

なるほど。経済も死なせない、人材も死なせないと。

豊田

死なせない。それで人材が働く場所を確保、発展させる。

香川

「今やるべきことをしっかりやっていく」という社長のお言葉は僕にもすごく刺さりました。これは今、気は弱くなって、みんな弱ってますから、例えば、もっと弱くなって、ふさぎ込んだりすることもできるでしょうけど、こういうときに何をやっておくかってほんとに大切なことなので。

豊田

これで、次は変わるんですよ。

香川

そうですよね。ほんとそう。ピンチのときこそ大切だっていう。

豊田

そう思います。

香川

越えられない試練はない。

豊田

そんなときにしかできないことがあるんです。

香川

そう思います、本当にありがとうございます。社長、今日はどうもありがとうございました。

豊田

今こういう状況になりまして、毎週毎週、世界と結びながら、いろんな状況をシェアしています。というのは、今回のコロナウイルスも日本だけの問題ではなくて、世界中で起こっている話ですので、それまた世界のトヨタの仲間の中で助け合いをしています。ですから、ぜひとも、海外で本当に頑張ってくれている人たちもいますから、ぜひ編集長のほうから、そういう方々にも取材をこういう形でしていただいて、逆に元気付けていただきたいなと思っています。

香川

分かりました。ぜひ取材をさせていただきたいと思います。ありがとうございます。社長、また今度、直接お会いさせてください。必ず、元に戻ったら、必ずですよ、うるさくて、ガソリン食うクルマに一緒に乗せてください。

豊田

次回はね、ちょっとガタガタ道へ行きましょう。サーキットもいいけれども、やっぱり、ダートですよ。

香川

ダートですか、ダート。

豊田

昆虫好きには、ダートです。

香川

分かりました、分かりました。僕はダートを楽しみに生きていきます(笑)。本当に今日はありがとうございました。

豊田

はい、お疲れさまでした。

香川

お疲れさまでした、ありがとうございました。

乗り切れない試練はない

テレ取材を終えまして、トヨタイムズの編集長として、今トヨタがどういうような切り口でこの難局に臨んでいるのかということを、今この瞬間の目の当たりにできて、そして豊田社長の姿勢を見ることができて、取りあえず今の段階での状況を把握できたことを少しほっとしています。安心しています。

社長もおっしゃっていましたけれども、コロナは今までの経験からして絶対に収束するんだと。収束したときにどうなるかということを、今、虎視眈々と耐えていくというのは、すごく理論的だなというふうに思いました。

社長と話すことによって、何か頑張れるんじゃないか、耐えられるんじゃないかっていう気持ちが、1時間前よりも上がっているのは事実です。

絶対に乗りきれる、乗りきれない試練はない。トヨタイムズ編集長としてもそれを取材を通じて確認し、一緒に見ていきたいと思っております。はい。

何はともあれ、でも、健康第一だから。健康なら何でもできるんですよ。

それでは、皆さん、健康第一で! トヨタイムズ。

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