トヨタの現在地を確認できた95分間
関係者向けの極秘映像を見終わった香川編集長。豊田社長が世界の仲間に送った熱いメッセージに何を思ったのか。
毎年トヨタ工業学園の卒業式に出席している豊田社長。それだけ豊田社長はこの学校の卒業生に大きな期待を寄せている。トヨタがこの学校を持つ意義とは何か。そして卒業生に何を期待をしているのか。香川編集長が社長に聞いた。
社長がこの卒業式に出席されるきっかけは、何だったのですか?
社長になって、(当時は)人事担当の副社長が出てたんですよね。その方が「社長出た方がいいよ」ということで、出始めたんですけど。これは、やっぱり「僕だな」と思いましたね。
そうですね(笑)。私もそう思います。
このAIの時代に、こういうものを、規律正しく、人だけでこれだけのものを見せるっていう。それは人間の本来持っている強さだったり、力、パワー、それから、創造性、すべてがないと、これだけそろわないと思うんですよね。まさにトヨタの「人づくり」という会社精神がこの学校に宿っていると思うんですが、この時代にこの学校を持ってる、トヨタにとっての意義って何なんでしょう?
結局「経営は人」っていうかね。そして「ビジネスも人」なんですよね。トップだけがしっかりしてればいい、っていうんじゃなくて、トップよりも、私は現場が揺るぎない形であれば、トヨタは大丈夫だと思ってるんですよ。
それを引き継いでいくためにね、毎年毎年、こうやって卒業した学生が、現場に入り、今その一番上には河合副社長もおられるわけですよね。各工場長とか、そういう方々も現場上がりになっている。
オヤジという。
ええ。これだけの大企業で、オヤジっていう組織というか、軍団があること自体がユニークだけど、それがトヨタの強みの最も大切なことだと、私は思ってます。
僕は2週間前に、規律訓練、それから朝礼を1日拝見させていただいて、もうびっくり。ただただ驚くしかなかったんですね。これを3年間やってきた生徒たちにとっての卒業式は、特別なものだろうし。この規律をやった上で、技術の実習だったりとかも見させていただいて、そこでも覚えることはいっぱいあるし、クルマの車体の下に潜り込んでいろいろいじってたりとか、1日中やることはいっぱいあって。「土日は何してんの?」って聞いたら、部活に明け暮れると。
しかも、あれだけの規律訓練をやってた彼らが、卒業した後、無邪気な、18歳の少年少女に戻る。あれが割と好きなんですよ。
今日社長がおっしゃっていた、まさに「未来は君たちの手にある」と。その未来を背負っていくトヨタの社員に、今日から向かっていくわけですけど、どういう社員になってもらいたいですか?この100年に一度の変革期の中で。
やっぱり自動車産業っていうのは、多くの人に支えられて成り立ってる産業として、過去、現在は成り立ってると思います。そういうときに自分だけが、あるものが得意だから自分はどんどん行くんだ、じゃなくて、全員が同じレベルでやっていくから「もっといいクルマ」が作れるんですよね。
それに加えて、これから先の見えない世界っていうのは回答がないんですね。回答がないっていうのはセオリーがない。セオリーがないっていうときに必要なのが人の好奇心であり、負けたくないとかね、そういう人間力だと思うんですよ。
今日の総代の、後藤君とか。
彼がね、サッカー部キャプテンとして、イエローカードもらっちゃって、それで降ろされましたと。たぶん、キャプテンやるような人ですから、ずっとレギュラーでやってきたと思うんですよね。
そうでしょうね。
それが初めてね、初めて控えに回ったときに、きっと彼はレギュラーでは学べなかったものを学んだと思うんですよ。それは僕、本人にも伝えましたしね。
最後、一言おっしゃられて。
そう。それを言いました。ずっとレギュラーで出ていたよりも、控えに回ったときの方が学ぶことは多いよ。
なるほど。
ええ。私自身もホッケーの世界で、1年生からレギュラーやったりしてね、ある面で鼻高の選手がね、全日本に行った途端に控えですよ。やっぱり、それまでずっと「試合に出るのは当たり前」の人が、出れなくなると努力するんですよ。そうして周りを見ると、もっと努力している人がいるんですよ。だからそれで「自分はかなわないな」と。試合が始まると、彼らのほうが熱くなってたりしますでしょう?
はい。
それには、自分はなんか恥ずかしいなっていう気になったし。だから、その似たようなものを、彼は学んだんだと思いますし、必ず今後の会社生活、社会人生活でも、陰ながら支えている縁の下の力持ちというところが見られる能力が出てくると、本当のオヤジに近づいてくれるんじゃないのかなと思いますね。
立場が上がっていけば上がっていくほど、見られなくなるじゃないですか、こういうものを。
そうなんです、はい。でも、トヨタのオヤジたちは、僕はそこの軸はぶれてないと思うんですよね。だから私なんか、あれだけのオヤジにいつも囲まれてるじゃないですか。だから気が気じゃないというかね。やっぱり、自分自身がもっとそこはやっていないと、嘘がつけないオヤジどもがたくさんいるわけですよ。
オヤジの中のね。
嘘がつけない環境っていうのは、それと、ごまかせない。ごまかせない環境がこれだけあるっていうのは、トヨタのよきDNAじゃないのかなというふうに思いますね。
このトヨタ工業学園の卒業生がエリートであるというふうにおっしゃる?
そうですそうです。そう思う。現場さえしっかりしてれば、100年に一度の大変革とか、いろんな変化があっても、私は大丈夫だと思ってるんですよ。
近い将来、あるいは遠い将来、トヨタが今年打ち出した新しい姿勢、「100年に一度の変革期」、「モビリティカンパニーの実現」。これに対して、彼ら、今日卒業した人たちももちろん含めて、この年代は対応していき、担っていかれると思いますか?
うん、間違いないですね。それは別に、今回の72期生だけじゃなくてね、毎年毎年。で、今年の72期生も大丈夫だなっていうふうに。だから、ありがとうっていう感じですよね。
僕、ここ、毎年来たいですね。ほんとに心を、関係なくてもなんか…。
滝行みたいなもの。
そう、滝行です。
(笑)
何にせよ、本当に素晴らしい体験をさせていただきました。ありがとうございました。
ありがとうございました。
じゃあ、社長「せーの!」でお願いします。
はい。せー…。
(笑)
カメラあそこね!みんな、目線はあそこ!はい!
いい、カメラ目線で。カメラ目線。
はい。
せーの!
トヨタイムズ!
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指示されたわけでも、競い合ったわけでもない。大切な人を守りたいという想いで、気付けば各所で始まっていたモノづくりの現場を取材した。
クルマを走らせる550万人へ。
2021年元旦、「私たちは、動く。」という広告が新聞各紙に掲載された。
クルマを走らせる550万人というハッシュタグと共に文章が記されている。