トヨタイムズ

一緒に未来を作ろう-豊田社長インタビュー全編-【CES2020取材】

香川編集長 2020.02.07 UPDATE

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2020年初頭のCESでトヨタが発表したのは、未来の実験都市「Toyota Woven City」を作るということ。従来の自動車メーカーの枠組みをはるかに超えた壮大な計画は、瞬く間に世界中で大きな話題となった。想像もしなかった発表に驚いた香川編集長は、さっそく豊田社長にインタビュー。なぜトヨタが街を作るのか、そしてトヨタは何を目指しているのか。自身の口から語られた未来への想いを全文収録。ぜひご覧ください。

やっぱり道がクルマをつくるんですよ

香川

社長、明けましておめでとうございます。

豊田

明けましておめでとうございます。ハッピーニューイヤー。

香川

本年もよろしくお願い申し上げます。いや早速なんですが、新年からものすごい発表を聞いたんですけど。社長、僕はかなり驚いたんですが、本気なんですか?

豊田

これだけみんなの前でいってますからね。嘘だったら、やばいですよ。

香川

やばいですよね。

豊田

はい、やばいですよ(笑)。

香川

これはやっぱり、本気なんですね。

豊田

本気です。もうやるしかないですよね。

香川

やるしかないですね。

豊田

やるしかないです。

香川

モビリティカンパニーにトヨタがなるということで、僕はトヨタイムズを去年の今ぐらいからスタートさせていただいて。そのときからこの着想、ここまで行くっていうことは、もう固められていたんですか?社長の頭の中で。

豊田

ふふふ(笑)。そういってほしいと思うでしょうね。全然考えてませんよ。そういった方がかっこいいかもしれませんけど、実はモビリティカンパニーになろうといったときに、私にここまでの構想があったかというと、なかったですね。

香川

正直なかった...?

豊田

なかった。だけどモビリティカンパニーになるってどういうことかなってね。e-Paletteがこの後どういう道をどうやって走っていくのかな、ということを考えたときに、やっぱり走らせる道が必要だな、と。やっぱりクルマは道が作るんですよ。

未来にとっても、自動運転になろうが、すべての人が乗るクルマだろうが、そこには道が必要です。

香川

なるほど。

豊田

じゃあ「自動運転とか、そういうクルマが走るための道ってどんなものだろう?」というのを、あの発表以降ずっと考えてきました。いろんな人の意見を聞いたり、いろんな人の協力を得て「リアルな街を作らせてもらいたい」っていうのが、今回の発表ですね。

香川

やはりトヨタ自動車ならではの「道」という発想。僕も自動運転について、それこそIT企業みたいなところも、まあ自動運転だったりとか、AIだったりとか、いろんなものを考えていましたけど、「トヨタでなければならない理由」っていうのが、今回は「道」がテーマになっているということなんですか?

豊田

はい。それはトヨタがクルマを作ってきた会社として、リアルな会社として今まで生きてきたから、そうなんですけど。今までの80年はそれでいいですよ。ここから先、トヨタが未来でも必要とされる会社になっていくためには、この「Woven City」をベースに新しいモビリティ会社に変革することが必要なんじゃないのかなと。その、いわばプラットフォーム、街といってもいいですよ。それが、これです。

香川

なるほど。

豊田

だから、「これを作れば完成」じゃなくて、「これがなければできない」と。

香川

スタートなんですね、これが。

豊田

ということになると思います。はい。

トヨタには企業全体を変革した経験がある

香川

社長ね、このToyota Woven Cityというのが、ご自身の口から、どういうことなのかっていうのを、歴史も含めて聞きたいんですけれども。

豊田

トヨタの原点というのは、自動織機になりますよね。

香川

そうなんですよね。

豊田

これは縦糸と横糸を織り混ぜる。そこにルーツがあるんですけども、トヨタはその後クルマというものを作りはじめます。

香川

はい。

豊田

ですからトヨタグループというのは、織機を作る会社からクルマを作る会社に、企業全体をモデルチェンジした経験がある会社なんです。それで今、自動車産業も「100年に1度の大変革」といわれています。ですから我々の今までの経験、企業全体をモデルチェンジした経験を、そのDNAを、今度は未来に向けてどう生かすか。それが今回だったと思うんですね。

未来になるにあたって、CASEといわれてる、コネクティッド(Connectivity)、自動運転(Autonomous)、電動化(Electrification)やMaaS(Mobility as a Service)、これをベースにした新しいクルマはどんな道を走るんだろう?どんな道であれば安全に、楽しく、かつど真ん中にいられるのが人であるか?

香川

なるほどねー。自動車会社から、今度は街を作る会社に転換しようとされているということ…。

豊田

街を作るというかね、自動車会社としては続けたいんですよ。

香川

そうですか。

豊田

私、クルマ好きですから(笑)。

香川

そうですね。

豊田

だからクルマが、どんな未来になっても必要とされる乗り物にしたい、と。

香川

なるほど。

豊田

それプラス、クルマが単なる移動手段じゃなくて、使い手の楽しさ。それプラス、やっぱり工業製品の中で「愛」がつく商品なんです。「愛車」っていわれてますから。馬からクルマに変わったときも「愛馬」から「愛車」といわれました。これが新しいモビリティに変わったときも、「愛車」からね、何といわれるかは知りませんが、やっぱりトヨタがリアルで作る新しいモビリティも「愛」がつくものにしてほしいな、という点にはこだわっていきたいと思います。

未来を作っていくのは「人」

香川

なるほど。僕は、このWoven Cityの発想と「これからこうします」という発表を聞いて、この1年間ずーっと思ってきた、この昨今やはり力をつけるAIだったり、ロボティクスだったり、こういったものが人と共存するときに、どうしても機械の面だったりAIの面が、逆に人をコントロールしていくんじゃないか、管理していくんじゃないかという危惧を常に持ってしまうんですけれども。

豊田

そうですね。私もそう思います。

香川

これはどうですか?この施設については。

豊田

例えば、監視されるとかね。

香川

そうですね。

豊田

受け取る側が「なんか監視されてるの?」と。やっぱりデータを提供しないとできないんでしょうけど、「データを提供する喜びってなんなの?」とか「自分にとって何がうれしいの?」ということがはっきりしないと。所詮、未来を作っていくのも人なんですよね。

香川

そうですね。

豊田

そうすると、その人がその未来をウェルカムと思う、その未来を心待ちにするというものがないとね。我々の作っていく未来って、データを集めて、人に監視されてっていうものになったら、きっと未来はできないと思うんです。

でもそうしたら「どうすんの?」ってことになりますから。だからそこにトヨタが入ることによって、いろんな多くの人が「そういうことなら一緒にやりたいね」「そういうことなら参加したいな」というプロジェクト。そしてそのファンダメンタル、その道、なんでもいいんですけど、そのベースになるものがこのToyota Woven Cityだという風に私は考えてます。

香川

あくまで人が主役だと。

豊田

と、私はこだわりたい。

CESを発表の場に選んだ理由

香川

CESという、本来は家電商品の見本市だった展示会において、こういうことを発表したというのは、そこもやはり考えていらっしゃった?

豊田

やっぱり東京モーターショーが変わりましたでしょ?自動車のワールドプレミアだけを出してたモーターショーから「未来のクルマってなに?」「未来のモビリティってなに?」ってやったら、あれだけの人が集まってくれた。

香川

そうですね、去年。ほんとに。

豊田

そうなると、日本だけでもダメだよね、自動車業界だけでもダメだよね。だからモーターショーの場でもなく、そしていろんな未来を作るのが、世界中から集まってるのが、僕はこのCESだという風に思いましたので。それともう一つこの場所にこだわったのは、2年前にここ(Toyota Woven City)で走るe-Palette。このe-Paletteをこの場で発表させてもらいました。

香川

なるほど。

豊田

2年経ってトヨタはe-Paletteの次期型をここで示したんじゃなくて、e-Paletteの使い方、e-Paletteをベースにして、未来のモビリティってこんなことになりますよという構想を発表できたことは、大変ありがたいと思うし、そこまで協力してくれた仲間たちに感謝をしたいという風に思います。

香川

ジェームス・カフナーさん、今日一緒に見させていただいたんですけども「僕はTRI-ADとして社長とビジョンをともにしながらプロジェクトを任されてる、とてもワクワクしてる、必ずややり遂げる」と笑いながら言っているわけですよ。

豊田

笑いながら言ってましたか。

香川

はい、もう笑いながら、もう満面の笑みで、いつものように。やはりスタッフも一丸となって社長のビジョンに向かっていってるな、というのを改めて感じました。

豊田

ビジョンは仕事と思って行くというよりも、自分が楽しい、「これ自分やりたかったよね」というオーナーシップを持ってるメンバーを、カフナーさんのリーダーシップのもと募ってくれれば、僕もまた面白い展開が出てくると思いますね。だってみんな面白いからやるんだもん。

香川

ですよね。そういう顔されてました、彼も。

豊田

してました?

香川

子供みたいな顔してました(笑)。

豊田

その子供らしさは失わないでほしいですね。

トヨタだからできる。でもトヨタだけではできない。

香川

2年前はe-Paletteという、それだけでも未来の想像物だったと思うんですよ。でもこの(Toyota Woven Cityという)着想を見ると、e-Paletteが本当に過去のものに見えるくらい、たった2年の間に進んでいっているところに、僕はちょっと驚きを禁じ得ないんですけども。これ社長、2021年初頭からもう着工すると。

豊田

もう来年ですよ、来年。来年の今ごろには、もう着工。

香川

遠い未来じゃないんですよね。そう考えると。

豊田

はい。みんな未来、未来って言ってますけど、その辺の納期とね、「この辺までにこういう未来を作るんだな」というのが明らかになってくるんじゃないでしょうか。
10年後にできる話は、来年の初頭にはできないと思います。だけど、来年の初頭があるが故に、10年後が変わってくる。

香川

なるほど。いや、じゃあこれ本当に本気なんですね。もう一度聞きますけど。

豊田

一応、私はトヨタ自動車という上場企業の社長をしております。

香川

はい、そうでございますね。

豊田

それでそこのボードメンバーもやっております。

香川

はい。

豊田

その取締役会というね、商法で認められた場所で決定したものを今日発表しておりますので。私が一人いい加減なことをいいますとね、これは大変まずいことになりますから。

香川

じゃあ、もうそういうことだと。これ、コマーシャルでもバンバン日本中に流れてしまいますけど、それも大丈夫?

豊田

大丈夫です。大丈夫ですよ。

香川

大丈夫ですか。

豊田

ただし、多くの方が、やっぱり「この指とまれ」じゃないんですが、「一緒に未来作ろうよ」という仲間たちが必要になってくると思います。これは、じゃあトヨタだけでできるかというと、絶対できません。

香川

なるほど。

豊田

だからこれはトヨタのためではありません。ただ、トヨタだからできることだとも思っています。だからこそ、「私のこういう技術を使いたい」「自分も未来にビジョンを持っている」という方に集まってもらって、お互い一緒に未来を作っていきませんか、ということを本当に多くの方に分かってもらいたいし、そういう応援団作りはしていきたいなと思います。

香川

トヨタイムズとしてもですね、これがどうなって行くのか、つぶさに見届けたいと思っておりますので。

豊田

それが編集長のお仕事ですから。

香川

はい、今年も頑張らせていただきます。よろしくお願いいたします。

豊田

はい。

香川

お疲れ様でした。

豊田

ありがとうございました。

香川

ありがとうございました。またアドバイスいただきたいと思います。

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