トヨタはなぜ街を作るのか。CESで豊田社長を直撃【CES2020取材】

トヨタはなぜ街を作るのか。CESで豊田社長を直撃【CES2020取材】

香川編集長 2020.01.30 UPDATE

INDEX

毎年1月に開催される、商品と技術の見本市CES(Consumer Electronics Show)。香川編集長は、ここでトヨタが重大発表をするという情報をつかんだ。その内容を確かめるため、はるばる開催地のラスベガスへ。「つまらないことを言ったらタダじゃおかないぞ!」となんだか鼻息が荒い編集長だった。

トヨタが、もうひとつ変わる!?

早朝のCESの会場に到着すると、そこにいたのはTRI-ADのジェームス・カフナーCEO。香川編集長は3カ月ほど前に日本橋でインタビューしたばかり。早速ブース内を見て回るが、ブースはまだ作っている途中で、説明パネルも肝心なところが隠されている。編集長が近づいてよく見ようとすると、カフナー氏に制止されてしまった。その秘密はこの後の発表で明かされるという。「本当にそんなエキサイティングなことを言ってくれるんですか?」と半信半疑のまま、発表会場の席に着いた。

02:02
カフナー:豊田社長がトヨタがこれからどう進化するか、とてもワクワクすることを説明します。

香川:本当にそんなエキサイティングなことを言ってくれるんですか?でも、ここCESですよ。東京モーターショーじゃないし。

カフナー:トヨタは企業としてクルマだけに留まらず、さらに大きな何かへ変わろうとしています。

香川:トヨタが変わる。また、もうひとつ変わる何かを。

カフナー:YES.

未来の実証都市、Toyota Woven City

CESは、近年、自動車メーカーの出展が増えているとはいえ、元はといえば家電の展示会だ。自動車メーカーが自動車について発表するなら、モーターショーというもっとふさわしい場がある。そんな中、トヨタがあえてCESで発表するものとは、一体何なのだろうか。そんな疑問が頭をよぎる香川編集長の前に、ついに豊田章男社長が姿を現した。

豊田社長は聴衆を前に、「(ほかの業界と同じように)トヨタもまた未来にフォーカスしています」と切り出した。コネクティッド(C)、自動運転(A)、シェアリング(S)、電動化(E)、すなわちCASEと呼ばれる技術。それに加えて、トヨタは人工知能、ヒューマン・モビリティ、ロボット、材料技術、そして持続可能なエネルギーも研究している。

「もし、これらすべての研究をひとつの場所でできたらどうでしょう。しかもリアルな生活の場で。」という問いかけに聴衆の期待も高まる。そこで豊田社長が発表したのが「未来の街を作る」という構想。その街の名は、Toyota Woven Cityだ。

03:57
豊田

私たちは日本の東富士にある70.8万㎡の土地に、未来の実証都市を作ります。

人々が実際に住んで、働いて、遊んで、そんな生活を送りながら実証に参加する街です。研究者、エンジニア、科学者たちがさまざまなことをコントロールできる実証環境が今まであったでしょうか。(ここでは)テクノロジーを自由に試すことができます。これが我々のビジョンです。

世の中をより良くしていくために

Toyota Woven Cityの設計を担当したのは、デンマーク出身の建築家、ビャルケ・インゲルス氏。公営住宅、病院、発電所、ミュージアムなど幅広い建築を手がけてきたインゲルス氏は、現在で最も強力なビジョンを持ち、革新的な建築家のひとりだ。

ビャルケ氏が設計した、Toyota Woven Cityは3つの道で構成される。ひとつは自動車のようにスピードが速いモビリティ用の道。もうひとつは歩行者と遅いパーソナルモビリティ用の道。そして3つ目は公園のような遊歩道。この3種類の道が組み合わされ、街のブロックが構成される。

街のインフラや物流ネットワークはすべて地下に設置される。この街を走り回るのはもちろん、ちょうど2年前のCESで発表された自動運転車両「e-Palette」だ。

06:49
豊田:ビャルケ、ここにいる皆様は「いつ入居できるんだろう」と考えていると思いますよ。

ビャルケ:はい、それはきっと、あなた次第だと思いますよ、ボス。今のところ、2021年初頭から段階的に着工する計画です。

豊田:まずは約2000名から居住し、段階的に増やしていきます。実際、私たちと一緒にこのプロジェクトに参画することに関心がある方、また将来の暮らしを改善したいと思われている方はどなたでも歓迎する予定です。

でもこれは、トヨタだけでなく、全人類の利益となるプロジェクトだと信じています。

(中略)

豊田:トヨタのような会社は、世の中をより良くしていくために役割を果たさなければいけないと考えています。これは決して軽くはない責任と約束です。そしてこのWoven Cityは、その約束を果たす上で、小さな、でもきっと重要な一歩となります。

これを作れば完成ではなく、これがないとできない

発表が終わるや否や、「大変なことを言いましたよ、おたくのボスは」と隣のカフナー氏に話しかける香川編集長。何しろ「街をひとつ作る」という壮大な計画を、世界が注目するCESの舞台で発表してしまったのだ。一体社長は何を考えているのか。早速編集長は豊田社長を直撃した。

09:02
香川:ものすごい発表を聞いたんですけど、これは本気なんですか?

豊田:これだけみんなの前で言ってますからね。ウソだったらやばいですよ。

香川:やばいですよね。

あくまで人が主役

豊田社長は本気だ。だがなぜ、街を作ろうと思ったのか。

「ここから先、トヨタが未来も必要とされる会社になっていくためには、このWoven Cityをベースに新しいモビリティ会社に変革することが必要なんじゃないかな、と。」「だからこれを作れば完成、じゃなくて、これがなければできない。」

トヨタが未来を創造していくために必要なプラットフォーム、それが実証都市Toyota Woven Cityなのだ。

人がコントロールするはずのAIやロボティクスが、逆に人をコントロールするようになるのではないか、と危惧する編集長。それに対して豊田社長は、こう答えた。

10:55
豊田:所詮未来を創っていくのも人なんですよ。そうすると、その人が未来をウェルカムと思う、未来を心待ちにするものがないと、できないと思うんです。

香川:あくまで人が主役だと。

ますますトヨタから目が離せない

「いやね、発表があるからって聞いたんだけどさ、街ってさー」と、衝撃的な発表を振り返りながら、なんだか少し困惑気味に見える香川編集長。思えばトヨタイムズ の初取材はちょうど1年前のデトロイトショー。スープラというガソリンの匂いがプンプンするクルマからスタートしたのだ。そこからAIやロボティクスの取材となり、自動運転を体験し、ついに未来の都市まで飛び出した。これからトヨタは一体どうなっていくのか。人間はテクノロジーに管理されるようになるのか。ますますしっかり取材していこうと決意を新たにする香川編集長だった。

12:25
香川:なんか全部をつなげるっていうことなんだけど、つながったけど、広げたねー。しかし、本当に人間がちゃんと管理できるのかねー。本当に人間が中心かどうかっていうのは、見ものですよ。

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