2019.09.27

香川編集長が自動運転に教えられたこと

シリコンバレーのTRIToyota Research Institute)と東富士研究所。日米の2つの研究所を立て続けに取材した香川編集長は、自動運転に対する考え方が大きく変わったという。エレベーターのようにつまらないと思っていた自動運転から、クルマの楽しさを教えられたという編集長に、取材の感想を語ってもらった。

ハンドルを握らなかったけど楽しかった

Q.  東富士での自動運転、体験していかがでしたか?

もうアトラクションだと言われたら、そうとしか思えないような感覚だったから。「自動運転」って「自動的につまんなく運転します」ってイメージだったのが、まったく変わっちゃった感じがしましたよね。

やっぱりこれまでハンドルを握ってきた身としては、ハンドルを握らなくなることが、ドライブの面白さを失わせるものだと推測していたから。でも今日はハンドルを握らなかったけど、そこで起こっていることは非常に楽しかったですね。

「クルマに人格が宿る」ってアニメが具現化されているという感覚がありましたね。「人がいる!」って。だって乗った感覚が完全に人がいるもの。人が突き動かして前に進んでいる感じがあるし、ブレーキを踏んでいる感じもあるし。無機質にスーって進むエレベーターのような感じじゃなかったよね。

愛車というか、なんだろう。自分のものというよりも、パートナーって意味の「愛」だね。かつての「愛車」っていうと、やっぱり自分のもの、ペット(Pet)っていう関係だけど、今回は同じ「P」でもパートナー(Partner)としてのクルマっていう。自分のパートナーがそこにいるって感覚がありましたね。それがすごい不思議だった。

ニュルと自動運転をつなぐ太い糸

Q.  取材を終えて感じたことはありますか?

自動運転って、人とまったく関係ないところで、ひっそりと機械的に無機質に行われていくものだと思っていた。ところが実は、人と密接に、人の影に寄り添うように存在しているものなんだってことで、それを存立しているこのトヨタのシステムに驚かされた。

いや、びっくりしますよね。まったく関係ないと思っていたわけだから、ニュルブクリンクで起こっていたことは。人が運転しないとできないようなことを、矢吹さんのテクニックで味わわせてもらって。

ニュルと自動運転という、まったく対極だと思っていたのが、実はものすごく太い糸で地球の裏側につながっているようなことを、今日浴びせかけられたわけだから。ちょっとびっくりしましたけどね。

矢吹モデルなわけでしょ。これがいろんな人のものが融合していって、すごいモデルもできるだろうし。そんなすごいことができるんだったら、それこそ成瀬さんをね。もしいらっしゃったときにこれがあったら、成瀬さんの運転を残せたわけでしょう。それを考えると、ああ仕方ないなと思うと同時に、成瀬さんが天国で今どう思ってらっしゃるんだろう、っていうのもすごく思ったんですよね。「ああ、残せたのに」って。

矢吹さんの運転は確実に残してるから。だから、自動運転ってそういう意味でいろんなものを継承していくツールになる可能性もあるんだなと思って。なんか、非常に複雑な思いでしたね。

「安全安心」の中にFunがある

Q.  自動運転とFun To Driveは両立すると思いますか?

ドリフトで体感したんですけど、やっぱりある程度のGはかかるわけですよ。そのGがずーっと一定で変わらない、ブレないので、最初にかかったGからどんどん減っていく感じがするんだよね。

その減っていく分何が増えて行くかって、「安心」が増えていくわけ。「このクルマ、絶対大丈夫だな」っていうのが、悔しいけど伴うんだよね。クルマに乗っている感覚がなくなるような。でもそれが悪い意味じゃないんだよね。それは、最初に自動運転を想像してたときとは違った。一番違った感覚ですね。Fun To DriveのFunにつながる安定があるんだなと。

本来のFun To Driveっていうのは、自分で急なハンドルを切るような操作をしてみたり、坂道で背中がスーってなるような運転をするのが楽しかったり、というのがあるよね。ところが今日は「安全安心」という、一番ヒヤヒヤとは関係のない箱の中に、実はFunがあるんだっていうことを痛感させられたので、これはちょっと予想外でしたね。

トヨタがモビリティーカンパニーとしてこれから行くんだと。それはいいクルマであり、Fun To Driveであり、安全安心なんだということが、当初僕は矛盾していると思っていたんだよね。でも、それは矛盾していないということを、今日突きつけられた。うん。まだ白旗はあげないけどね。ちょっと「うっ」ていう一歩目を味あわされた感じがしましたね。安全の中にFunがあったね。

シリコンバレーのTRIと今回の東富士研究所を続けて見たことによって、やっぱり自動運転の意識が、(これまでは)正直たいしたことないと思っていたけど、変わったのは事実ですね。

「命がけでやっている」ということ、とにかく「安全安心を打ち立てるためにやっている」ということ、それから「いいクルマを作りたい」、何より「モビリティーカンパニーとしてのトヨタになりたい」と、そういったもの全部が輪になって、自動運転の2カ所を見ることによってつながりつつある。おぼろげなフォームができつつあるんだよね、僕の中では。

「モビリティーカンパニーって何?」って思ってたけど、自分で馬を運転していた時代、豊田社長がおっしゃっているその時代から、クルマが立ち上がって自動運転まで行こうとしている。そのすべての歴史を包括してモビリティーカンパニーになるって(豊田社長は)多分言っていたと思うんだけど、それがまさか自動運転を軸に分かろうとは思わなかったね。

この2つが融合して、つまりTRIと東富士研究所、アメリカと日本のトヨタが合体して、ここで安心安全は何か、モビリティーカンパニーとは何か、そして自動運転とは何か、この答えを今出そうとしているような気がするよね。

で、その先にやっぱりトヨタがずっと言ってきたFun To Driveが少し見えたような気がする。実際楽しかったしね、今日。あれだってもう完全にアトラクションカーですよ。僕にとって。あれくらい人格があるって感じが楽しかったから。

クルマにすごい楽しさがあるってことを自動運転を通して教えられたのはちょっとびっくりしました。だからその先にあるFun To Driveはちょっと見てみたい気がしますね。中々、見えてきたぞ。モビリティーカンパニーが。

自動運転アリかもなぁ。ちくしょう。