2019.08.30

クルマの未来が見えた気がする

5月のニュルブルクリンク取材では「自動運転、FUN TO DRIVE、どっちを取るんだトヨタ!」と吠えていた香川編集長。だがTRIで実際に自動運転を体験し、何やらその考えにも変化が生まれてきたようだ。そんな編集長に、自動運転やTRIToyota Research Instituteについて聞いてみた。

トヨタの自動運転は「おかみさん」!?

人をサポートして、出過ぎないようにする
Q.  トヨタの自動運転と他の自動運転、何か違いを感じましたか?

融合しているガーディアンシステムというのが、どうやらトヨタのものらしいと。ああいうことだったら、他の会社も何か率先してやっていそうだけれど、どうやらトヨタのものらしいということが分かってきたので、あのシステムを思いついて、開発しているところの一点に尽きるんじゃないんですかね。

自動運転は完全に人に取って代わるんじゃなくて、人をサポートして、出過ぎないようにするという、おかみさんみたいな役をするわけでしょう。その発想がすごくこう、日本の会社らしいなと思いましたね。

全部取って代わる、「人間はもういりません」という形になって、結局いろいろなものが機械化されてきた。駅に改札がなくなったり、いろいろなものがなくなっていったじゃないですか。そういう意味では、別に「取って代わるんじゃないんだ」というところが、すごくトヨタのリサーチ・インスティテュートの特色だと思って、これは面白いなと思った。

自動運転を体験してみた感想
Q.  実際に自動運転を体験してみた感想を教えてください。

逆に自動運転の方から言うと、自動運転すらも、もちろん何のハンドルにもタッチしていないんだけれど、それでも何かこう、このクルマをこちらの意思で動かしているようなニュアンスがあったので、ニュルブルクリンクで思ったような自動運転大反対みたいなことではない、ということが今回分かったかな。

Q.  自動運転は、もっといいクルマづくりにつながると思いますか?

クルマっていうのは人の個性で全部変わるじゃないですか。だからレースがあるし、優劣がつくし。

でも今回は、1つのマシン、ロボットが1つのことを学んだら、それをすべて他のロボットも共有して、そこまで引き上げていくっていうのが、とても面白いなと思って。

それは実は個性を消していくことなんだけれども、クルマのあるべき姿として「安全性」というものが大きな軸になるとするならば、これはひとつ「いいクルマ」というものの、十分条件ではないかもしれないけれども、必要条件にはなるかなと。まずこれありきで、その後にどこに行くかということなのかな、と思いましたけれどね。これで終わりじゃないけれど、これは一つあるかなと。

AIの開発

モビリティカンパニーってこういうことなんだな

Q.  シリコンバレーの他の会社とTRI違いは感じましたか?

今日、シリコンバレーのIT企業をずっと巡ってきたけれども、IT企業をいくつ見ても、なんかすごく建物の奥ががらんとしていて、実体がない気がするのね。目に見えないものから、目に見えないものに何かを移動したところで、お金がぶわんと落ちていて。2019年のお金のもうけ方、お金の回し方というのは「あっ、目に見えないところから、目に見えないものを産んで、目に見えないところに渡すんだな」ということを、そのIT企業の建っている建物から、ものすごく感じたんですよ。

一方、この同じAIの開発だったり、研究だったり、ロボティクスをやっているわれわれトヨタ・リサーチ・インスティテュートは、母体がトヨタなわけで。トヨタって何の会社かといったら、やっぱり具体的なモノを売って、それでお金が返ってくるという20世紀のやり方なんですよね。まさに。

そういうような産業として、トヨタがいま、ただの自動車会社じゃなくてモビリティカンパニーになるという、それがちょっと見えたね、僕自身も。具体的な範囲として。「あっ、モビリティカンパニーって、こういうことなんだな」というのは。

ただの自動車会社じゃなくてモビリティカンパニーになる

あれ、最初にデトロイトで聞いたとき、本当によく分からなかったの。「モビリティカンパニーになると言うんです」って、最初にスタジオでやったときだね。まあ、分かるんだけど。モビリティカンパニー。

モビリティって行動だし、カンパニーって存在だから、折り合いのうまくない単語同士が合っているような気がしたんだよね。でも、それは実は、今回のこのTRIの研究、ロボティクスとトヨタという折り合いがつかなさそうなものが合っているのと同じような融合の仕方をしているんだなと思って、腑に落ちた部分がわりといっぱいありましたね。

人と自動運転の融合にクルマの未来が見えた気がする

トヨタという日本の会社で、アメリカの人々、あるいは欧米人の方々が、日本の心を持って、事故ゼロ、安心安全のために、命がけで仕事をやってる。この姿を見て、僕は目からウロコ、「すげーな」と思った。トヨタの大きさを感じました。

彼らもやっぱり、絶対安心安全で信頼できるクルマを作るということにコミットしてるし、それをTRIの中でやっていると。TRIをあえて選んで、他のシリコンバレーのITの会社じゃなくて、そこでやっているということ。これはすごい意味があることだと思いました。

今回、自動運転に初めて乗ってみて、人と自動運転、「手動の運転」と「自動運転」が融合してやるところに、少しなんかクルマの運転の未来が見えた気がするんだよね。僕自身も少し楽しかったし。いよいよここから、自動運転の認識が僕はちょっと変わったので、未来が見えてきた気がします。

ちょっと楽しくなるかもしれないね、未来が。トヨタイムズ!



ただね、これね、いつできるんだろうねぇ、日が暮れちゃうよ…。