2019.08.23

AIだけじゃない。TRIがロボットを研究する理由

シリコンバレーのTRIToyota Research Instituteでは、ロボット研究も盛んに行われ、ユニークな人材が集まっている。なぜトヨタがロボットに力を入れるのだろうか。香川編集長が開発現場に潜入し、その理由を探った。

NASAではなく、TRIだからこそできること

家庭用介助ロボットを開発

はじめにラボを案内してくれたのは、 ロボティクス開発責任者のマックス・バジュラチャーリアー氏。NASA出身というキャリアの持ち主だ。

香川

TRIに入るまでのマックスの経歴、職歴は非常にユニークだと聞いています。それについて話してください。

マックス

僕は昔からロボットを作り続けています。それがきっかけでMIT(マサチューセッツ工科大学)に入学し、卒業後はNASAのJPL(ジェット推進研究所)に入社しました。そこでは、火星探査用のローバーを開発していました。

ローバー以外にも様々なロボット開発に携わり、そのあとはグーグルを経て、ボストン・ダイナミックスに転職しました。そこでは四本足のヒューマノイドロボットを開発しており、そのロボットに知覚を与える仕事をしていました。そのあとグーグルでコンシューマー向けのロボットを開発し、画期的なロボット技術を開発したいと思い、TRIに入社しました。

香川

NASAで火星に行くローバーを担当していた人が、グーグル、IT企業の大会社を経て、トヨタのTRI。NASAにいても物足りなかったんですか。

マックス

僕にとって大切なことは、人助けをすることと、すべての人にとって便利なロボットを作ることです。ローバーは、火星を探査する研究員にとっては便利なものですが、開発には莫大な費用がかかります。それは他のロボットも同じで、すべての人にロボットを与えることは難しいです。

一方、TRIではとても珍しい取り組みをしています。それは社会におけるすべての人々、世界のすべての人々に便利なロボットを届ける、ということです

世界のすべての人々に便利なロボットを届ける
香川

あなたが頭で思ってること、理念を、最終的に消費者が手にしてモノとして持つ。それを選択したと今のお話から分かりました。

これはTRIが自動車産業とAI開発、それからロボティクス、これらを全部持っていなくてはできなかったと思うんです。自動車開発や安全運転とロボティクスは、将来的にどのように結びついていくのか、展望を教えてください。

マックス

もちろんトヨタでは、クルマを作り続けていますし、今後ロボットもさらに作っていくようになるでしょう。しかし最も重要なのは、クルマを作ることだけではなく、クルマに搭載されるソフトウェア開発と、人工知能によってクルマ自体が学習できるようにすることです。

ロボットは学習したことをシェアできる

ロボティクスエンジニアの高岡豊氏

ロボティクスエンジニアの高岡豊氏は、AIとロボティクスを組み合わせた研究を紹介してくれた。

香川

HSRっていうのは何なのか、ちょっと教えていただきたいんですけど。

高岡

HSRはヒューマンサポートロボットの略でして、家庭の中で高齢者とか障がい者をサポートする目的で作られたものです。

実際にここで学んだものを、今この101というHSRにシェアをして、落ちているおもちゃの片付けをしています。ぬいぐるみっぽいものはピンクに、カップっぽいものは白い箱に、それ以外をオレンジにということで。AIの技術でこれはコップぽいなとか、これはぬいぐるみっぽいなというのを理解して。

香川

はい。

高岡

今ちょっと失敗しましたね。

香川

はいはい。そうですね。

失敗する方がなんかいい。なんかこう、人間らしいというか。

高岡

人間っぽい。

香川

あーこういうこともあるんだな。

高岡

一個ちょっと間違ってますね。

香川

そうですね、初の失敗でしたね。

高岡

はい。

香川

カメラが回って緊張してたんじゃないですか?

高岡

そうですね(笑)

香川

人間はちょっとスランプがあったりしながら成長するもんですけどね。

高岡

はい。

落ちているおもちゃの片付けをしています
高岡

これはオレンジの方いきましたね。

香川

はいはい。これは正解と。

高岡

はい。

香川

素晴らしい。

何も全部にそのチップを入れなくても、彼のやつを他に移せばいいということになると。

高岡

そうですね。はい。

香川

大量生産しなければならないときに、その能力が全部入るわけでしょ?

高岡

そうです。

香川

クルマにまでいかす、というのがトヨタ・リサーチ・インスティテュートでこれをやってることの意義だと思うので。、ぜひやってほしいと思う。

TRIのゴールは「すべての人に移動の自由を」

ステフィ・パエプケ氏

ユーザーエキスペリエンスデザイナーのステフィ・パエプケ氏が見せてくれたロボットは、新しいモビリティエクスペリエンスとして示唆に富んだものだった。こうして見てみると、ロボティクスは未来のモビリティそのもの。そして、だからこそトヨタは熱心にロボットを研究しているのだ。

ステフィ

こちらはテレプレゼンスのロボットです。私がケンブリッジのロボットに映ってるのが見えると思うのですが、身長を調整しようとしています。

香川

なるほど。これがあることによってどういうような効果がある、何が一番便利になるんだろうか。

ステフィ

年配の方や、障がい者の方など色々な方が、行きたいと思った場所に行ける仕組みです。

香川

こっちは、あれがカメラになってるんですよね。

ステフィ

やってみませんか?

香川

やる。

テレプレゼンスのロボット
ステフィ

ここに立ってください。3000マイル離れたケンブリッジと繋がっています。ラボの中を動き回ることもできますよ。

香川

なるほど。いる感覚になっている。

ステフィ

私たちのゴールは「Mobility for All」です。すべての人が好きなところに行けて、そこで物理的に存在できることを目指しています。

ギル(ギル・プラット TRI最高経営責任者)

高齢で動くのが難しい人にはどのようにモビリティを提供できるでしょうか?

香川

この機械をまだもっともっとすごい威力を発揮する場所があるよね。何だろうな。

ギル

もし将来足つきのロボットができたらハイキングにいけるかもしれないですね。魚のようになれば、海底を泳いでいけるような体験も。

香川

そっちの方向ですね。やっぱり。

ギル

もし、このロボットを昆虫の大きさにできたら、昆虫の巣を探検できるかもしれません。

香川

それは嬉しいよ。虫になれるなら。虫目線でさ、羽がついたら飛べるわけでしょ。バーチャルの飛行機体験もできるし、本来小さくしか見えなかったものがものすごく大きく見えるわけでしょ。薔薇の花弁の一番奥のところが見えたりとか。それはもう虫になれるからいいんじゃないの、すごく。