2019.08.05

編集長、自動運転を初体験

自動運転は一体どこまで進んでいるのか。実用化までにはどんな課題があるのか。その最新情報を教えてもらうべく、香川編集長はTRIでリスクアセスメント責任者を務めるジョン・レナード氏にインタビュー。ジョンさんはMIT(マサチューセッツ工科大学)の教授も務める自動運転のキーパーソンだ。

人がAIを監視するのではなく、AIが人を助ける

ジョン・レナード氏にインタビュー
香川

えー、ジョンさん。MITの教授というですね、言ってみたら頂点ですよ。その時間をTRIに割いている理由を教えてください。

ジョン

自分はとてもラッキーだと思います。教授を務めるMITでは才能のある学生といろいろな問題に取り組めて、TRIでは命を救うための研究ができるからです。

香川

TRIで自動運転を研究されている。他の自動車会社でも自動運転というのは、程度の差はあっても開発はされていると思うんです。TRIでなければならない自動運転というのは何なんでしょう、そこに突出しているものというのは。

ジョン

他にはない、トヨタ独自の自動運転に対するアプローチが「ガーディアン」と呼ばれるものです。人がAIを監視するのではなく、AIが人を助けるという考え方です。私が強く信じているのは、ガーディアンなら最短で実用化でき、より多くの命を守り、事故を防げるということ。さらに高齢者や障がいのある方々のためのモビリティにも応用できます。

とにかく命を守ること…それがトヨタの最大の目標であり、そのために私たちはガーディアンという考え方からスタートしています。

周囲を360°見渡す、3種類の「目」

LIDARは、周囲の情報を詳細に取得します

駐車場でTRI 自動運転オペレーションマネージャーのリコ・オング氏が見せてくれたのは、カメラやセンサーをびっしりととりつけた白いレクサス。自動運転開発のための試験車両だ。取り付けられた機器の意味や役割を、ひとつひとつ説明してくれた。

ギル

こちらにあるのが、試験車両です。

リコ

見ての通り、普通のレクサスではありません。天井にカメラが設置されています。このクルマには3種類の目があります。 LIDAR (ライダー/レーザー光センサー技術)*とレーダーとカメラです。これがLIDARです。LIDARは、周囲の情報を詳細に取得します。前や横、後ろなど様々な方向を向いたカメラも設置しています。そうすることで360°見えるようになります。

*レーザー光を照射し、物体に当てて跳ね返ってくるまでの時間を計測し物体までの距離や方向を測定。 電波を使って測定するレーダーに対して、LiDAR(ライダー)はレーザー光を使って測定するもの。

香川

なるほど。

リコ

さらにここにもLIDARが搭載されています。短距離タイプのLIDARです。

香川

おぉ。これもそうなんだね。

リコ

クルマの近くの周りにいる子どもなどを見るためのものです。4、5機のLIDAR、そしてカメラが10機搭載されていて色々な視点から世界を見ています。

香川

何が出てくる?うわ、すっげぇの出てきたこれ!うわ〜、これクルマは変わったなぁ。血管みたいだもんね、もう。大動脈みたい。

リコ

どうやって歩道の手前で停止するか、どのように車線変更するか?などを考える頭脳がここに載っています。自動運転を体験してみませんか?

香川

待ってたよ、その言葉を!

自動運転を初体験!

自動運転を初体験!

リコさんの「体験してみませんか」の言葉を聞いて、早速試乗に向かう香川編集長。待っていたのは自動運転シニアソフトウェアエンジニアの寒澤佑介氏と、自動運転開発責任者のライアン・ユースティス氏。

寒澤

こんにちは、寒澤です。よろしくお願いします。

香川

行ってきます!

ライアン

これから我々TRIの人工知能の世界をお見せします。クルマが街をどう見ているか?見ててくださいね。

青が正確なデータをもとにしたもの、赤がGPSからのデータだけのものです。GPSだけではズレが出てしまうので、LIDARを使い正しい位置をリアルタイムで特定しています。

LIDARが見た地上の風景が映し出されています

これはLIDARが見た地上の風景が映し出されています。そしてこちらは8台のカメラの映像です。カメラの映像をLIDARの情報と組み合わせてクルマや道路、植物などを判別しています。こうして、このクルマは360°を同時に見ることができるのです。

緑の線はそれぞれのクルマがどういった行動をとるか予想したものです。こちらの緑のラインはこのクルマの予想経路です。それでは、自動運転に切り替えてみましょう。


自動運転です。

香川

自動運転!?これ。あら、外してるよ、手を。

ライアン

ドライバーのリコもハンドルから手を離しています。

香川

すごいすごい。このクルマを勝手に、感知…、おーい。これアクセルは踏んでるの?

ライアン

NO.

香川

NO!? リコ、こっち向いて。ワオ、すごい!すごいすごい。


いやー面白かった。Thank you リコ、Thank you ライアン。ありがとうございました。ちゃんと長い距離を乗ってもっと味わいたいと思いました。

乗り越えるべき4つの課題とは

4つの課題
香川

えー先ほど自動運転の車に僕初めて乗ったんですけど、とても楽しくて、自由が奪われるような体験ではなかったんですね。その意味では、これが早く実現したらいいなと思ったんですが、一方でそれを実現するために、たくさんのことをまだまだしなければならないと思うんです。

何の分野、例えばカメラなのかAIの分野なのか、それとも上で搭載しているLIDARの部分なのか、何が今一番弱くて、あるいは逆にどの部分を強く、これが強いからこれを進めていけば実現に至るのか、そこら辺の具体的な課題等々聞かせていただきたければと思います。

ジョン

4つの課題があります。まず一つは、路上の人間とのやりとりです。
2つめは、クルマが使う地図を、メンテナンスしていくことなんです。それにより、道路がそういった環境かをうまく理解することができます。3つ目は、天候です。雨や雪、それ以外にも逆光などでカメラが見えにくくなる事もあります。4つ目は認識のレベルを上げるということです。高いレベルで何でも検索、検知できなければいけない。誤認識を無くしていかなければいけません。そういったことが現在の課題です。

香川

シリコンバレーではいろんな企業があってすごくいい条件、すごくいい立場を用意しますとか、いいお金を出しますとか、ご自身の会社を持ちませんかということが、ジョンさんならいくらでも話が降りてくると思うんですけど、そういうオファーが来たりしたらどうですか。

ジョン

私は、TRIのことは仕事とは捉えていないんです。それよりも「情熱」といいましょうか、「宿命的」なものだという風に思っています。ギルさんに冗談で「お金を払ってくれなくったって働きますよ」って言ったこともあります。私は本当に、このような技術がクルマに搭載されるのを見たいんです。本当に宿命的な仕事に出会えることが大事だと、研究に励む学生たちに言っています。そうすると、世界にも貢献できて、仕事というよりも、本当に楽しいことになるんだよと言っています。

香川

それギルさんに言ったら、本当にお金払いませんよ。大丈夫ですか?

ジョン

大丈夫です…。

香川

(笑)

ジョン

あ、でも私の妻は怒るかもしれないですね。