2019.07.18

最後の1mmの薄皮を取るために、これをつくる勇気がすごい

トヨタの新しい研究施設「トヨタ テクニカルセンター 下山」の取材を終えた香川編集長。テストコースを走り、コース周辺の里山を歩き回り、開発者たちに話を聞いてトヨタがなぜこの施設を作ったのかの答えを探した。今回の取材から香川編集長はどんなことを感じ、何を思ったのか。最後に振り返ってもらった。

走って走って、最後の1mmを見つけてやるという気概

走って走って、クルマを痛めつけまくって、その1mmを見つけてやる
Q.  今回の取材で、何か驚いたことはありましたか?

体重落とすのもそうだけど、最初の1kg、2kgって、すぐ痩せるじゃないですか、食べなきゃ。でも目指す体重の、最後の100gって一番落ちにくい。「何やったってもう落ちない」っていうような。ボクサーの減量じゃないけど。

今、もうクルマの時代ってそこまできてると思うんですよ。もうすべて終わってるんですよ、進化は。でも最後の1mmの薄皮を取るために、まだあれだけのものを作ろうとしてる。その勇気がすごいなと思ったね。

走って走って、クルマを痛めつけまくって、その1mmを見つけてやるっていう、その気概というか、勇気というか、それで同時に森も守っちゃおうっていう。その一民間企業としての規模の大きさに、驚きましたね。

Q.  森を切り拓いてコースを作るという事について。

森を切って、木を切って。森をなくさなければ、こういう施設は絶対作れないわけですよ。足して1しかないわけだから。どっかがなくならないと、どっかは足せないわけで。

荒廃している林だったり、下地が死んでしまった森の肌を、もう一回再生させることにつなげるというのは、遅ればせながら最近やっと人間がやってること。でも、それはものすごく大切な姿勢だと思いましたよ。

ニュルよりも、狭い日本にこそ必要なコース

狭い日本にこそ必要なコース
Q.  ニュルブルクリンクを模した下山は必要だと思いますか?

でもこの走りをしなきゃ、ないからね。ドイツってやっぱり公道広いし、まっすぐな道もあるし。逆にニュルの方がいるのかって思うぐらいなんだけど。日本っていう狭い国では、あぜ道や田んぼ道の幅が基本なわけじゃないですか。広い道である必要はない国だから、そこにこういう道を作ることで21世紀のクルマを生もうっていう必要性は、僕はある気がしますね。

ニュルのときよりも、下山のほうが「あー、日本人には必要だな」って思いましたね。そしてトヨタという日本一の自動車会社にとっては、こういうようなことを通して、「日本人らしい解決」をしていくんだろうなと。細かかったり、繊細だったり、普通では気づかない細かいタッチっていうのは発見していくんじゃないかなと思いましたね。

ただ一方で、環境というものを考えたときに「森大丈夫?」って思っちゃうと、ここまでの大きさは必要なのかなっていうのは分からないけど。

具体的な「もっといいクルマ」が見たい

Q.  香川さんが考える『もっといいクルマ』とは?

簡単に思いつくのは「事故をなくすクルマ」というのは、ひとつあると思うよね。クルマが生み出した一番の弊害は事故だし、乗り物に事故はつきものだけど、それをどうリカバーするか。自動運転なのか、安全に止まらせる装置みたいなものなのか、ちょっとわからないけれど。

世の中が、どういうクルマを欲してて、「クルマにはこういう風になってほしい」とか「こういうクルマが好き」だとかということと、このテストコースでクルマを開発していくということ。その目指してることが、一致してるかどうかは、ちょっと僕にもわからない。それは時間が証明してくれるんだと思います。

社長が、とにかく「もっといいクルマをつくる」と。「そのためにここがある」ということは、とても納得する言葉ではある。

一方で、具体的なものが知りたいんだよね。具体的な「もっといいクルマ」とは何か、見続けていくのが、このトヨタイムズのスタンスだということを再確認しました。「もっといいクルマとは何か」ね。

もっといいクルマって何だろう。何だろうね。教えてもらいたいね、もっといいクルマ。

十分いいんですよ。スープラもクラウンも。十分いいんだけど「もっといいクルマ」ってなんだろう。これ、疑問が逆に深まったかもしれないな。うん。もっといいクルマに対する疑問が深まりました。