2019.07.05

テストコースをつくった担当者に「道の意味」を聞く

起伏に富み、複雑なコーナーが次々と待ち受ける…、まさにニュルブルクリンクを凝縮したかのような新しいテストコース。国内にいくつもテストコースを持つトヨタが、新たな投資をしてまでつくった道には、どんな意義があるのだろうか。

現地で編集長を出迎えたのは、ニュルブルクリンクでも話を聞いたテストドライバーの矢吹久氏と、開発支援部の佐々木智英氏。矢吹氏の運転でテストコースを体験した後、インタビューを敢行した。

「クルマを痛めつける道」で見えてくるもの

矢吹氏の運転でテストコースを体験した後、インタビューを敢行した
香川

「ここまでの大きなサーキットコースが必要なのか?」という思いは、やっぱり今もあるのね。そこで、このコースをなんのために作っているのか、ということを、もう一度お二人それぞれの言葉で聞きたいなと。

矢吹

やっぱり「もっといいクルマづくり」っていうのが第一にあって。お客様に喜んでいただくために、安心安全っていうのもあります。

「走る曲がる止まる」という、いわゆる運動性能をやってると、競合メーカーがいろいろあるんですけども、やっぱり自分自身、まだ上には上があるなと感じています。

そういう競合他社に勝つためにも、「もっといいクルマ」。そこを目指してやってますので、そのためにも、こういうコースが必要だと思っています。

佐々木

例えば今日走っていただいたカントリー路ですと、これまでのトヨタにはなかなかないような道がありますし、極端な話「クルマを痛めつける道」になっています。今まで見えなかったところが見えてきますから、そこをどういった形でクルマとして味付けをしていくのか。それが我々の腕の見せどころなのかなあと思います。

ここはニュルのような育成の場

下山コース
香川

(矢吹さんと)一緒にニュルブルクリンクで走らせていただいたいて。やっぱりあそこに行くのって、すごく遠かったし、でも行っただけの価値はあると僕は思った。

で、今日横に乗せていただいて、正直それよりもドキドキするような体験だったんですよ。「わー、このカーブすごい!」とか「ここの直線でこのスピード出すんだ」と思って。ニュルで走ったときよりもスピードは出てなかったですけど、それよりも緊迫感があるということを味わえたので、この下山コースもなかなかその奥深さを体験しました。

ニュルが人をつくる、そしてそのつくられた人がクルマをつくる、というトヨタの流れからすると、やっぱりこの下山のテストコースというのは、ニュルと同じくらいの人間の育成の場になっていくんでしょうか?

矢吹

十分なりますね。ニュルの活動は、レースです。ドライバーはプロだったり。我々も運転はしたんですけども、一方でメカニックの整備だとか、そっちの育成の場でもありました。

一部のメンバーはニュルに行って実際に走って、ああいう厳しい環境でのトレーニングやテクニックといったことを知って、それを一般車の開発にも生かすってなるんですけど、それって本当に一部の人しかできないですよね。

香川

そうですよね。全員がニュルに行けるわけじゃないんだから。

ボロが出るから、直すべきところが分かる

続いて編集長は、テストコースに隣接する整備工場へ。ここで働く凄腕技能養成部のメンバーに話を聞いた。

凄腕技能養成部 大阪晃弘氏
香川

ここ、どうですか?こういう環境の中に、整備工場とテストコースがあるってのは。

大阪

近いですからね。設計者だとかエンジニアと、我々のようにクルマに触る人が一緒にやれるんで、改善のサイクルが速いですね。

香川

今までは距離があったわけですよね?

大阪

そうですね。(これまでも)テストコースまで近いですけど、ここだとすぐ脇ですから。

凄腕技能養成部 相良優斗氏
香川

このテストコースはどうですか?

相良

そうですね、自分はまだ入社して2年目で。

香川

2年目!

相良

はい。評価に関することは、あまり分からないんですけども。まずは「いいクルマ」は「いい人」がつくるということで、「いい人材」になれるように、職場の先輩や上司の方に、いろいろ鍛えていただいてます。

凄腕技能養成部 坂口卓弥氏
香川

このテストコース、どうですか?

坂口

私もしっかり走ったことはないんですけども、連続するコーナーだとかアップダウンは、私自身経験したことがないので、また新たなクルマに対する発見が絶対出てくると思います。自分自身運転したときのこともイメージしながら、クルマをどう改善していったらいいか、というのにつなげていきたいと思います。

凄腕技能養成部 梶川仁氏
梶川

これぐらい高低差があったりとか、コーナーが連続したりとか、あとずっとハンドルを切ってなきゃいけないような長いコーナーがたくさんあるので。

香川

そうそう。すごくありますよね。

梶川

やはりクルマのボロが出やすいというか、ダメなところがわかりやすいと思いますので、改善する方向も、しっかりと見極められるんじゃないかなと思います。

「体験すること」が人をつくる

新しいテストコース

今回の取材で、香川編集長はどんなことを感じたのだろうか。そして新しいテストコースの意義に納得できたのだろうか。

香川

「ここで走る」という体感。「ニュルブルクリンクで走る」もそうなんだけど、実際に「走ること」によって得られるものは、尊いものだという気がしたんですよね。だからこれだけの施設を作る意味があるとするならば、それは「体験してもらう」こと。それが人をつくるんだ、っていうのが、今日納得したことですね。